閑話 北の国を巡る人々[Ⅱ]
気を失っていたようで、いつもの場所にいた。
………橋の下だ。
「………気づきましたか。誰彼構わず喧嘩を売るのは、やめたほうが良いですよ」
淑やかに優しく、けれど真剣に咎められた。
けれど一つ、解せないことがある。
「誤解だ、アモル。私は喧嘩を売ったんじゃない。見下してたんだ」
「でしたら、それもお止めになられたほうがよろしいかと」
にっこりと笑われる。
私はどうやら、口で彼女に勝つことができないらしい。
でも、あえて口論を続けてみた。
「そもそも、アモル、おまえが毒入りの菓子を町中にばら蒔くから、こんな騒ぎになったんじゃないか」
「そうですね。まさか私も、伝染病と間違われるとは想定外でした」
はあっ、と息をはく。
全くこの女は、虫も殺せなさそうな顔をしてえげつないことをする。……そんなところに惚れ込んで、仲間になってしまったのだけど。
「………もうやるなよ」
「被害者の記録はやや不足が…………善処します」
「はは……まぁ、そのおかげで私が名を上げるのに使えるわけだが」
毒があるということは、解毒もある。
その他にも緩和剤だのいろいろと持ってるんだ、この魔女は。
「では、とうとう動くのですね?」
「ああ。この北の国に、聖女の愛を与えようじゃないか」
にたり、と笑う。
きっと人は、私とアモルを悪辣と言うだろう。
だがそれもこれも、野望のため。
そう―――ご恩ある教会のためなのだ。
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……また更新が滞っても、呆れつつ見放さないでくださいね……。