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70 まずい。


「よ、よくぞ我が国へ! アルルベット・ド・ルラーナ令嬢! さぁ、滞在の間、ゆるりと王宮で過ごされよ!」


「ありがとうございます」



北の国についてまず、王への挨拶となった。

だが綺麗な笑顔を張り付けた笑顔の裏は、はっきり言って不機嫌そのもの。

当然だ。馬車にあんなにも長く揺られてたのだから。

だからきっと、人の粗が際立って見えたのだろう。国について話す王に、気づいたらこんなことを思っていた。


………この王様は随分と腰が低いような気がする。


気のせい? 確かにそうかもしれない。考えすぎかもしれない。

そもそも、比較対象が悪い。うちの国の国王様は、人前では派手な衣装まで着てかなり尊大に振る舞っていたし。

ああ、あれは宰相であるお父様の采配だっけ。じゃあ私が基準にしてるのは、お父様なのか? ……いや、そんなことはどうでも良いんだけど。


そんなことを考えていたときふと、思い出した。



『それにほら、このルラーナ家は世界中に点在してるんだよ?』



ついこの間の会話。お父様の言葉だ。

世界中に点在していると、確かにお父様はそう言った。知らないし、にわかに信じられない話だけど、これは本当の話なのだろう。


点在というからには、表立った組織として在るわけではないのだろう。けど、確かにそこにはある。さらに言えば、権力も。


このルラーナ公爵家の権力が、氷山の一角としたら?

世界レベルのところまで、ルラーナ家(私たち)の力が及んでるとしたら?


国王をしている者もいると、お父様は確かにそう言った。

前にいる、この王では恐らくない。仮にそうならば、謙ることはない。

けれどこの仮説を信じ、例えばこの王の後ろにルラーナの人間がいるとしたら………



「ルラーナ令嬢?」



パチン、と目が覚めたような感覚だった。

不思議そうな顔をした、国王。


まずい。



「失礼しました。丁寧なご挨拶、痛み入ります。知らない土地での不安もなくなりました」


「そっ、そうですか! それはそれは………」



ニコニコと、また話が始まる。今度はボロは出さない。


………先ほどの憶測は一度忘れよう。他国だ。余計なことを考える余裕も無いだろう。でも。



『どうせだから糧にすれば良い。』



考える必要はある。

………私はもう、間違えることはできない。

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