68 次は。
なんか、長いです。
「…………」
「…………」
あー………気まずい。とっても気まずい。
何か喋ってくれないかなぁ。
私は今、王宮にいる。婚約者ということで、無理言って泊めてもらっている。
若干歓迎されていないような空気をひたすら無視しつつ通されたのは、殿下の客室だった。そして冒頭の沈黙である。
あー、何話せば良いんだ。
そもそもこの人と会うのは、あの珍事以来だ。告白もどきをかまされた私は、どうしたら良いんだろうか。
…………返事とか、いる?
「…………ユウラムは」
「っ、はい」
「知っての通り、公爵の預りになった」
「そうですね」
「好きだと言った件は」
「…………」
「出来れば忘れてくれ」
「……はぁ」
おっと、思わず声が低くなってしまった。でもこれは仕方ないだろう。
全く、勝手に決めて強要する。王には良いかもしれませんけど、普段もそれだと嫌われますよ。
せめて理由くらいは説明しましょうよ。
「………こう、婚約者同士の恋愛は……推奨されないだろう?」
「………どうでしょう。時と場合によるのでは」
「………相手にもよるだろう。………もし俺が本気を向けたら、それに値するだけの気持ちを返してくれるのか?」
真剣に見つめられ、咄嗟に目をそらしてしまった。
………ああ、私は何をやってる。
「………気持ちは、等価交換という訳でもないのでは?」
「ほう?」
さらに目線が強くなる。
本当に、私の口は何をいっているのか。
まるで子供のように、ポロリポロリと言葉が溢れてしまう。
「………だが人間は、利己的なものだ」
「全てがそうとは言えないでしょう。許容の領域だって、分野によって異なります」
「そうかもな。なら、お前の恋愛は、どうだ?」
「知りませんよ。あなたはどうなんです?」
「俺は、極めて狭いと思う」
まさかまともに答えるとは思わなかった。思わず目を見張る。
彼のその目から、本気なんだと伝わった。なんだか、置いていかれたような気分だ。
「狭いからこそ、広げようとする。または、深く掘っても良い」
「………どうやって?」
口を開きかけて、また閉じた。
何を言うつもりだったかわからないが、どうやらもう言うつもりはないようだ。
「北の国に行くそうだな」
「ええ」
王宮に入るとき、ある程度誤魔化して執事に話したのが伝わったんだろう。
特に否定することはないので、頷いた。
「お前が望んでのことじゃないかもしれんが、どうせだから糧にすれば良い。それで将来役に立てば、もうけものだろう」
そんな考え方があったか。
………昔は似ていたようだったのに、やはりもう彼の考えは解らない。
「俺も精進しておく。………次は、本音を話せると良いな」
「……はい」
独り言のようにも感じたけど、返事をしておいた。
私とこの人は、どこか遠い。
ええいつか。私もそれを望んではいるんです。




