67 わかる。
もう一度学園に戻るとユウに会えたので、取り敢えず空き部屋を見つけて今後の相談をする。
「………じゃあユウは、西の国に赴任させられるの?」
「はい………といっても、まだ実感が湧きませんが」
わかる。
「でも、ならきっとお父様とお母様は南の国にいるんでしょうね」
「何故ですか?」
「そりゃあ簡単。お父様はとんだ天の邪鬼だもの、そう簡単に見つからない。………ひょっとしたら、海の向こうの島々にいるかも………」
「落ち着いてください。手紙には故郷にいるとあったんでしょう?なら、調べれば良いじゃないですか、公爵夫婦の故郷を」
「………この国」
「は?」
「書類の上では、お父様もお母様も故郷はこの国で、それ以外に存在し得ないの!」
もちろん調べたさ、たったさっき図書室で。抜かりない。
だがそもそも、ウチは平民ではない。公爵家なのだ。どこの馬の骨とも知れないよそ者がそうホイホイとなれる爵位ではない。夫人になることだって然り。
ちなみに人に聞く手段も無しだ。誰に聞いたってきっと、お父様の故郷は”この国”だとかえってくるだろう。
ああ、言っててげんなりしてきた。いっそ探すのやめちゃう?
「いや、それもまずいですよ。なんたって僕たちは今、家具を差し押さえられているんです。なんとか場所を探って手紙なり直接なり文句を叩きつけないと、公爵が死ぬまで世界をたらい回しです」
「……………そんなの、御免ね」
「ええ」
というか、ユウラムはわりと私と公爵のお父様を相手に遠慮ない物言いをするようになったな。心も読んでるし。やはり、実家のしがらみがなくなったからかなー…………なんて考えている場合でもない。
「探すほかないわね。仕方ない。………ところで、私たちは今日どこで寝れば良いの?」
聖女だったころは夜空を眺めながら寝たこともあったけど、最近はそんなこと無かった。けど、この無一文の状況では、致し方ないかもしれない。
「………まぁ手段を選ばなければ選択肢は無数ですが、今の公爵家の現状を考えれば、恥を広めるような真似はしたくないですね」
「同感」
里帰りに家具まで持っていって家がもぬけの殻なんて、世界探してもうちだけのことだろう。いまさらながら、どうしてこうなった。
「ああでも…………姉上ならうってつけの場所があるじゃないですか」
ん?




