閑話 大人のおはなし
国王様視点
私たちは部屋の中で子供たちの顔合わせの様子を伺っていた。
…初めは不安だったけれど、仲良く握手している様子が見えて安心した。
どうやら、あの令嬢が目の前の男に似ているという噂は本当のようだ。
私たちも幼い頃に初めて会ってすぐ、仲良くなった。
「どう?僕の可愛いお姫様は、やっぱり良い子でしょ?」
「そうだな。珍しげにこのマントを見ていたし、容姿は公爵夫人に似ているが、中身はどちらかというとお前に似ているかもしれない。」
「そう?あの子、ここからあそこが見えないと思って言葉崩してるよ。
抜けているところがロゼにそっくりだ。」
「ここから植え込みを挟んで口を読むなんてお前くらいのものだ」
「貴方だって何してるかくらいはわかるでしょ?」
「まあ、な」
何を話してるかまでは分からない。
…何故、目の前の親友は笑いを堪えているのだろう?
「それにしてもお前の方から婚約を持ちかけるなんて驚いたな。妻と娘を溺愛しているお前のことだから、てっきり、適齢期ギリギリまで嫁に出さないか、娘の好きなやつと結婚させるつもりだと思っていたぞ」
「うん、僕もそう思っていたんだけどね。」
策略家と呼ばれるこの男のことだ。
何か、大きな理由があるのだろう。
「やっぱり、その辺の男にあの娘を取られるのは、嫌だなって」
「…は?」
「もし、平民と結婚でもしてあの娘が苦労したら、嫌でしょ?その点、お妃様になっちゃえば、革命でもない限りは安泰だし。それに、君の子供と僕の娘だったら、性格も合うだろうと思ったから。」
「そんな理由で…」
「娘を嫁に出すには大事な条件だよ。それに、君の子供が相手だったら虫除けにもなるし、あの娘が本当に結婚したい人が現れたら婚約解消もしやすいしね」
「…なんというか…お前の世界は本当に妻子を中心に回ってるな。もし、娘がこの世が欲しいとでも言い出したらどうするのだ?」
「最善は尽くすよ」
「…あの令嬢は、やっぱりお前に似てないな。いや、似ていたら困る」
「でしょ?」
愉快そうに笑う親友を見て、令嬢が性格も夫人に似ることを強く願った。
昔はもう少しまともだったんだがな…。
そう思いつつも、何故か憎めない親友に向かってため息をついた。