65 おかしいね?
新章?
あああ、どんどん乙女ゲームから離れていく……。
「ルラーナ先生、異動命令だ」
「へ?」
ある日カナヨルタ校長先生に呼び出されて恐る恐る行ってみると、唐突にそう切り出された。そりゃあ意図せず声だって漏れるだろう。
しかし相手は校長先生。そして忘れがちだが私は公爵令嬢。
気を取り直して、言葉の意味を聞き返してみる。
「……こほん。移動とは、どのような意味でしょうか?」
「そのままだ。君に異動命令がきている」
移動命令?私に? どこから?
学園の先生は一応公務員だから、異動ということもある……のか?
そもそも私は友達作りが目的で学園に来てるから、この貴族が多く通う学園でないとそんなに意味がないし………。
いや、そんな理由で仕事をボイコットしようとしてる訳じゃない。ただ、その辺に関してはお父様がしっかり圧力をかけてる筈………うん。
おかしいね? というか、どこに異動命令が出ているんだ?
「異動先は?」
「アモルサラン学園。北の国の名門だな」
北 の 国 ! ?
ここ、大陸の東ですよ!?
やや西寄りで中央に近いとはいえ、北の国はもちろんはるか北。
馬が全力で駆けていったとしても、四・五日はかかる。
………いや、あの雪だらけの国では馬のスピードも落ちるか。
「えーっと………何故?」
「君の父君からの発案だな」
「!?」
「伝言を預かっている………『里帰りするから、アルルもおいで』だそうだ」
「!!?」
……………。
………………………うん。えーっと、少し落ち着こう。
………んんん、冷静には……なれないな、うん。
よし、ひとつだけ心のなかで叫んでみよう。
お父様の里は、この国じゃないんですかーーッ!?




