62 教えます、帝国とは!
「――では、次のページ。帝国ですね」
「帝国?」
ある生徒が繰り返す。
確かに、馴染みのない言葉なのかもしれない。今の子にとっては。
「帝国は、この大陸に存在した三つの国の総称です。アスカラとオスト、それに………サンナイトスノー。あとは属国としてレヴァとトルヤ、ロレミマにイラキシスにグルータにサテラ。この六国があります」
「わー………」
「大国ですね」
「はい。とくに巨大だったのが、サンナイトスノー。ここが帝国とその頃主に呼ばれていた国で、核です」
「国名はどんな意味なんですか?」
「”サンナイトスノー”は、白夜という意味です。皆さんは、白夜をご存知でしょうか?」
「理科で習ったような……」
「確か、日が沈まない………でしたよね?」
不安げに聞いてくる生徒たちに、私は思わずニヤリと笑う。
自分が生きていた時代は嫌なものだけど………教えるのは、少し楽しい。
「そうです。地理的な影響で、夜が来ない国。それが、元々のサンナイトスノーでした」
夜の無い国、サンナイトスノー。
神のいる国、サンナイトスノー。
無敵の国の、サンナイトスノー。
これが当時の国の謳い文句だった。
「すごい国ですね………!」
「と、思うでしょう?」
あの国の形容詞は、間違っても”すごい”ではない。
神秘的な白夜でさえも、取り違えた愚かなあの国の。