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閑話 怪我の功名
俺はあの日から、なにか、本質を見抜こうとする癖がついた。
怪我の功名とでも言うか、悪く言えば以前より疑り深くなったような気がする。
だからこそ気付いた。
彼女は………アルルは何かがおかしい。
最初は、何か悩みでもあるのかと思った。悩みの要因に若干の心あたりもあるし、時々陰りのあるような顔をするからだ。
でも、すぐにそれが間違いであると気付く。
そういえば彼女は、幼い頃から変わり者だった。
そこに惚れた俺が言うのも難があるが、とにかく普通と違うことに気付いていた。
それが酷くなったのは、入学式の頃だろうか?
それとも、ユウラムに出会った頃?
胸に何かが詰まり、息苦しさを感じた。
でもそんな個人の感傷は、どうでも良い。
とにかく俺は、これを解決するために、人を訪ねることにした。何故、あの少女に頼ったのかは、分からない。
けれどあの娘は、…………きっと彼女のためになることを、知っていると思ったのだ。
だから俺は、今日も少女の下に向かう。
………気持ちを踏み躙ってると、知りながら。
「……待たせたな、メルサ嬢……」
「いいえ! ぜんぜん待ってないですよ殿下!!」




