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50 不思議。
起き上がると、自分のベッドにいた。
……いつの間に帰ってきたんだろう。不思議。
「……ふふっ」
夢を思い出して、思わず笑ってしまった。
珍しく、気分が高揚している。こんなの、いつぶりだろう。
そう考えはじめて、私は生まれ変わったばかりのときを思い出した。
新しい人生に期待したころ。殿下と会ったころ。
そして、前世をはっきりと思い出したころ。
あれから、随分振りまわされた。
らしくなく、へこんでいた。
「本当に、らしくなかった。真っ直ぐで、素直なのが私の取り柄なのに」
気に入らない世界を、変えたころの私。
殿下と婚約したころの私。
思えばあのとき、ろくでもないことを言って、殿下と打ち解けたのだっけ。
悩んだり、鬱々しいのは性に合わない。
何が麻酔だ。私はすべて、理想を現実に移してきたじゃないか。
そして……認められて、伝説になってるじゃないか。
私は悪かもしれない。けれど、それでも構わない。
良いじゃないか。私はそれで良いんだ。
なにより私は、決めただろう。今世に生まれ変わったときに。
「私は今世、好きに生きる」
さあ。片を付けよう。




