45 …そうか。
今日は、年に一度の王宮主催のパーティー。
国中から、お偉いさんが集まる。
私は、結局ユウにエスコートを頼んだ。
…だって殿下は、……カぺラさんをエスコートするって言ってたし……。
慣れないコルセットは、歩くのだって億劫になる。
ああ、きらびやかなこの空気が目に毒だ。
…早く帰りたい。
………いやいや、今日全て計画を実行するんだから。
この一年、なんのために頑張ってきたんだ。
ふと視界に殿下が映る。
殿下は着飾った令嬢たちに囲まれている。
…そうか。婚約者である私のエスコートをしていないからか。
…………。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お集まり頂き、ありがとうございます。今日は、定例のパーティーと共にひとつ連絡がございます」
それぞれ、談笑していた人々。
怖いくらいに穏やかだったパーティーの空気が、殿下の一言で変わった。
年若い人々は目に見えて驚き、関心を示す。
王宮に燻る狸のような人々は、……静かに耳だけを傾けた。
お父様と目が合うと、ニッコリと笑われた。
……流石、お父様。
「実は、ここのところ国王が不正をしている、という不名誉な噂が流れています」
空気がざわつく。
でも、驚いているのは三割程度で、どちらかと言うと噂を王子殿下が言い出したことに対して驚いているようだ。
「王子である私が聞き逃すことは出来ないので、協力者の人々と共に調査させて頂きました。すると、ある人物の名前が浮上しました。それは…」
殿下は、一度息をついて言う。
「ビリジアン伯爵。貴方です」
殿下はそう言い切った。
私は、ゆっくりとユウの顔を伺う。
……そう。
ビリジアン伯爵は、ユウの……実父、なのだ。




