44 …できた。
「………できた。出来ましたね」
王子派に入って一年。
ようやく、これで。
私たちは、全ての武器を手に入れた。
今、私は殿下とのお茶会に来ている。
私たちはこれで、全てのピースを集めた。
「ああ、そうだな……」
殿下は、少し寂しそうにフッと笑った。
「どうしました?」
私はそう尋ねた。
「いや、なに。お前は、本当に仕事ばかりだな」
「…そんなに仕事、してますか?」
おかしいな。私、今世では自由に生きるって決めたのに。
「ああ。……なあ、俺がメルサ嬢と仲良くしてるって、知ってるか?」
「…え、はい。」
一瞬、名前で呼ぶものだから分からなかった。
…確かに、仲良くしてるんだな…。
「お前、少し前から、あの養子と仲が良いだろ?」
「ユウのことですか」
ユウは、私の仲間だ。
仲が良いというより、依存に近い。
同じ痛みが分かる仲間。きっとユウもそう思っている。
「……愛称で呼ぶほどか…」
「………え…?」
「なあ」
殿下は、自分に言い聞かせるように、こう言った。
「俺たちの婚約は、あくまで婚約だ。もし、養子と結ばれたいのなら、止めない」
「………殿………下……?」
「この国は、血の繋がりが無ければ、姉弟でも結婚できる。」
「…は…」
「…俺は、今度のパーティーは、メルサ嬢をエスコートする」
「え…?」
「だから、お前は…勝手に、しろ。…作戦には協力してもらうがな」
殿下は早口にそういいつのって、場を後にした。
……ユウと、結婚?
考えたこともない。
私たちは、傷を舐め合うために一緒にいるだけなのだから。
…でも、端から見ると、恋愛的な空気に見えるのだろうか。
……こういうのは、慣れない。いくつになっても。
でも、殿下の今の言葉に胸が軋んだことは分かる。
いや、いけない。
今はまだ、個人の感情に流される訳にはいかない。
私はーー。




