42 私も私で忙しいし。
最近、殿下とのお茶会の頻度が減った。
会話の数も減ったような気がする。
代わりとでも言うかのように、殿下はピンク髪の少女、メルサ・カペラさんを引き連れるようになった。
例の調査を進めているのだと思うけど、周りの人は婚約者破棄も目前だ、などと騒ぎ立てている。
まあ、どうでも良いけど。私も私で忙しいし。
私はユウと共に国の闇を探っていた。
今はその一貫で、交流のあるアトリア・ド・ザストリアさんの家に来ている。
あれから、ザストリアさんと仲良くなったことで、クラスの女の子の方々とも仲良くなれた。
うん、わざわざ学園で先生をやっている甲斐があるというものだ。
「アルルベッド・ド・ルラーナでございます。 本日はお招き頂きありがとうございます」
私がお茶会の席でそう言うと、参加者は笑った。
「嫌ですわ、先生。そんな他人行儀になさらなくても。私的な集まりなのですから」
「ありがとうございます、ザストリアさん。」
「先生! わたくしのことはリアとお呼び下さい! わたくしも先生をアルル先生と呼びたいので!」
私は思わず笑ってしまった。
あのきつい印象のあったザストリアさんがこうも変わるとは。
「分かりました、ではよろしくお願い致します、リアさん」
「先生! 私のこともミサとお呼び下さい!」
「私のことはモモと!」
リアさんのお友達の方々も口々にそう言ってくれた。
……ありがとうございます。
楽しいお茶会が終わったあと、ザストリア侯爵に呼び出された。
…なんだろうなー。
「本日は、我が屋敷までお足運び頂き、ありがとうございます」
部屋を訪ね、ソファに掛けると、妙齢の侯爵にそう言われた。
「いえいえ、こちらこそお招き頂きありがとうございます」
本当は立場が上である公爵家でお茶会をやるべきだったけれど、別にそんなのどうでも良いと思う。
「アルルベッド様のお話は、ルラーナ公爵から伺っていましたが……お懐の深いお言葉、ありがとうございます」
そう言って侯爵は深々と頭を下げたあと、本題を切り出した。
「国王様のお話は、お耳に入ってますか?」
「ええ。私は、とても信じられないません」
「私もでございます。あの心優しい国王様が、そのようなことをなさる筈がございません」
「はい」
「そこで裏を取っていると、貴女様のことを知りまして……」
「なるほど」
「単刀直入に申し上げます」
侯爵は私を真っ直ぐと見据えた。
「私どもと手を組みませんか?」




