39 一緒に…
「は、はは…」
強ばった私の口から笑い声が漏れた。
まともだと、思っていたのに。
過去の私も、この子も。
…私はいつの間にか、変わっていたらしい。
「…目的とは、何ですか?」
「平和だと思われているこの国には、小さな闇が、あるんです。僕は、僕のような子供がいなくなれば満足です」
なんと。
目指すものまで、同じとは。
「…ねぇ、ユウラム。貴方のこと、ユウって呼んで良い?」
私は迷わずそう言った。
「何故ですか? 先ほどまでは、丁寧な態度を崩さなかったのに」
何故か?
「…親近感が沸いたの。私の話、聞いてくれない?」
私の言葉に戸惑ったような顔をしたユウに、私は笑いかけた。
仲良くしようと思った理由は、ごく単純なもの。
理解し合える仲間を、無意識に欲していたのだ。
…勿論、こんなのは傷の舐め合いだと分かってるけど。
私はそれから、今日のことを話した。
守秘義務もあったもんじゃ無いけど、どうしてもこの子に話してみたいと思った。
私の話を聞いたユウは、想像の通り憤りを露にした。
「…そんな話が、あり得るのですか?」
あり得ないと言いたい。
本当にしろ、殿下の間違いにしろ、嫌な話だ。
「さあね…ところで、ユウ。貴方、学園に来ない?」
「…は? 僕は、まだ入学の年齢に達してませんが…」
「知ってる。生徒としての年齢にはね。」
「…何を」
「教員免許を持っていれば、あの人手不足の現場なら、誰でも雇ってくれる」
「それが…? 僕は持っていません」
「けど、取ろうと思えば取れる。 そうでしょう?」
あのお父様が、私のお願いだからとはいえ、無能な人間を養子にするわけない。
「一緒に国の裏側でも、覗いてみない?」
私はそう言ってユウに手を差し出した。
…それにしても、まさか人を学園に誘う側になるとはね。