34 概ねこれで一段落…?
あの日をきっかけに、私はクラスの問題は乗り越えられたと思う。
…というのも。
「先生ッ!」
「…どうしました? …ザストリアさん」
「ここ、教えて下さいませッ!」
「…これ、…理科じゃないですか。私、一応、社会科の担当なんですが…」
「いえいえ、先生が優秀なのは聞き及んでますわ! 教えて下さいませ!」
「…」
そう、何故か、あのリーダーの女の子、つまりザストリアさんに懐かれてしまったのだ。
「…良いわ、良いわ、アトリア・ド・ザストリアが悪役令嬢を盲目的に崇拝するのはシナリオ通りっ! 何かバグってたり、ラグいことはあるけど、だいたいオッケーねっ!」
「…何か言いましたか? カぺラさん」
突然、大きな声で喋りだしたピンク髪の子、メルサ・カぺラさんについ話し掛けてしまった。
「あっ! そうそう、この人ストーリー知らないんだった! じゃあ、猫かぶってヒロインのキャラを通すべきっ!? いやいや、あたしの素、もう見られてるんだったっ! じゃあ面倒だからこんまんまで良いやっ! 何でもないですよ先生っ!!」
「…そうですか」
…どうやらこの子は頭の中で思考することが出来ないタイプらしい。
考えていることをここまでペラペラ喋る人に出会ったのは初めてだ。
言っていることの半分も理解出来ないけど…
…うーん、担任として色々と将来が心配になるな。
「ちょっと貴女っ! 先生に意味の分からないことを言うのはお止めなさいっ!」
「はあっ!? 悪役令嬢の取り巻きごときが天下のヒロイン様に意見しないでくれるっ!!?」
「何を言ってますの!? 私、先生のご意見に従って、貴女の存在には目を瞑ることに致しましたけれど、やはり平民なんかとは相容れませんわっ!」
キンキンとした甲高い声が耳に堪えてきた。
二人の発言に色々と思う所はあるけれど…まあいいや。
取り敢えず。
「二人とも、そこまでにしといて下さい。そろそろ、授業なので。ほら、皆さんも席について下さい」
私は後ろに追いやられていた男の子たちや女の子たち、そしてケンカをしていた二人に向かって声をかけた。
…平民が学園にいることが気にくわないという考えのもとザストリアさんについていた女の子たちは、リーダーだったザストリアさんが私につき、さらに敵対していたカぺラさんと直接的な言い合いをするようになったことで、ひとまずは成り行きを見守ることにしたようだ。
また、機械的に権力についてザストリアさんに従っていた子たちは、私の発言をきっかけに自由に学園生活を送ることにしたようだ。
うん、概ねこれで一段落…だと、思う。
…後の問題は、アレかな…。