25 …えぇー。
「はいみんな注目ー!」
校長先生が声をあげ、机で仕事をしていた先生方が顔を上げる。
私はと言うと、王子殿下と並んで校長先生の机の側、つまり今注目されてるところにいる。
「こちら、今月からウチの学園で働いて下さる殿下と令嬢だ。はい二人、自己紹介を」
私と殿下は顔を見合わせる。
「…王子をやってる。教科は数学だ。…世話になる」
…えぇー…殿下、名前くらいは言いましょうよ…。
「良し。次」
…えぇー?
「アルルベッド・ド・ルラーナです。社会科担当です。よろしくお願い致します。」
「硬い。何か、芸でもやって」
「何故です!? 私は普通に言われた通り自己紹介したのに!?」
「はい、ナイスツッコミ」
…えぇー。
「まあ、そんなわけで新しい先生だ。二人は座って良し。
…ウチは少数経営だから、かしこまらず、素で過ごすことが馴染むコツだ」
確かに、人数は少ない。さっきの女性の言った通り五・六人程度しかいなくて、机がガラガラだ。
「じゃあ今日の入学式の説明に移る」
速っ。
「今日といってもこの学園の入学式は夕方から始まるため、まだたっぷり時間がある。」
夕方から入学式というのは珍しいが、何でも昔入学式の後にイブニングパーティーをやっていた頃の名残だと言う。
「なので、細かい準備がまだ残してある」
残して、ある!?
「だから、各自仕事を割り振った。詳しくは手元の資料を読むように。終わったヤツから自由の身だ。…ただし、入学式の一時間前には戻れ。では、解散。」
校長先生が言い切った途端、先輩先生が立ち上がった。
私と殿下が唖然としている間に、校長先生を残して全員が職員室から出て行った。
「ほら、先生たち」
校長先生が机に座ったままイタズラっぽく笑った。
「急がないと、終わらないよ」