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24 こっ、怖い!

「大丈夫ですか…?」


私が机に突っ伏していると、後ろから声がした。

振り替えってみると、気弱そうな女性がこちらを心配そうに伺っていた。


…うっかり前世の癖をやってしまったけれど、これは王妃教育を受けた者としてアウトなアレでは?


私はマッハで姿勢を正し、顔に笑顔を張り付けた。


「失礼しました。大丈夫です。…予想以上の書類だったので、意図せず、物思いに耽ってしまっていました。」


あ、疲れてたから、うっかり本音が。


すると女性は悟ったようにフッと笑った。


「分かります。私も初めて仕事量を見たとき、思わず眼科に行く予定を立てていました。でも…それ、大分減らして書かれていますよ」


「は、あ。…え? へ、減らして?」


「ええ、新米の先生の心の折れるスピードを、少しでも緩めるためらしいです。」


「…どっちにしろ心は折れるんですね…」


「そうですね。」


「ちなみに、皆さん均等にこの仕事量ですか?」


「はい。何せ、うちの学園、生徒三百人弱に対して先生五人前後ですからね。いやぁ、本当に、貴女と殿下がこちらで助かりました。じゃなかったら、私は今この世にいなかったかもしれません。」


こっ、怖い!


「…他の人手が余っているとこ、どこか無いんですかね?」


「甘いですね。学園で教えられる資格の取れる人は、そんなに多くないです。だから、庶民の学園も貴族の学園も人手が極限まで減らされてます。でも、学園は将来王宮に勤めるような優秀な教員免許を持っている子供に一時的に教師をやって貰ってるので、他の職種に比べればまだマシです。」


そこまであちこちカツカツとは。


「…私、出世して労働環境を整えることを検討します…」


そう言うと擦れた表情をしていた女性は、子供のように目を輝かせた。


「未来の王妃様にそう言って頂けると心強いです!」


…そんなに期待を寄せらるのも、荷が重いかなぁ…。


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