18 嫌な予感がするなぁ。
あれから緩やかに長い時間が経ち、私は今年15歳になる。
パーティーで倒れてからは、私は病弱というイメージがついたようで、他人は私を大事に、と言えば聞こえは良いけど、腫れ物に接するような態度を取られるようになった。
私はというと、今までなるべく考えないようにしていた前世の夢を見たことで、こちらの世界に何か馴染めなくなったような気がする。
もともと、賢い訳でも要領が良い訳でもないのだ。
まあ、だから仕様がない。
さて、そんな私は今お父様に呼び出されてお父様の書斎に向かっている。
うーん、デジャブ。
前もこんなことあったなぁ。
嫌な予感がするなぁ。
コンコン
「失礼します」
「うん、ようこそ、アルル」
「ご用件は? …前もこうやって呼び出されたこと、ありましたよね」
「そうだね。あのときは、婚約の件だったっけ?」
「はい。…あのときと似ていて、何か嫌な予感がするのですが」
「あはは、アルルにとって婚約は嫌なことだったの?」
「少なくとも、面倒ごとではありましたね」
「アルル、外出嫌いだもんね」
「この屋敷にいれば大抵の用件は屋敷で済むので。…話が逸れていました。何故、お父様は私をこの部屋に呼ばれたので?」
「うん、実はね」
お父様は一回、間を置いた。
「この国に学園があるのは知ってるね?」
「知ってます。平民から貴族、さまざまな層に向けた学園がありますね」
「アルルは、通う必要がある?」
「ないですね。私は王妃教育として家庭教師から大体の知識は与えられたので今さら学園で学ぶことはないと思います。」
「そう。知識は十二分なんだけど…。残念ながらそんな訳にはいかない」
「何故ですか?」
「学園は、人脈作りに必要不可欠なんだ。学園に行くことで貴族は人付き合いを学ぶ」
「なるほど…」
「アルルは同世代の知り合いは殿下くらいしかいないだろう?」
「…ええ」
「大人に知り合いが多い訳でもない」
「まあ、その通りです」
「だから、学園に通うことは外せない。」
「おっしゃることは理解できました。しかし、学園に人脈作りの為だけに行くのもどうかと思います」
私が学園側だったら、そんな人付き合いの為だけに来てるやつよりももっと学びたいと思っている人間をとる。
「そう。そうなんだよね。そこで相談なんだけど…アルル、教員免許持っていたよね?」
…確かに、勉強が楽しかった頃に腕試しで取ったけれど…。
「待って下さい。嫌な予感が凄く…」
「アルルみたいなケースはたまにあるんだ。現に王子殿下も資格を持ってるしね。僕も持ってるよ。」
「…つまり、掻い摘むと?」
「アルルには、殿下と同じく学園で教鞭を振って欲しいんだ」




