14 きりがない
アルルの過去です。
聖女だった私は、"教会"という組織にいた。
教会は、言ってみれば巨大なボランティア団体だった。
また、漠然とした死後の世界と神の救いを信じることを広める役割も持っていた。
要は、無気力に生きる人々が欲した心の支えだ。
私もその無気力に生きる人間の一人だった。
親もなく。才能もなく。勿論、お金だってなかった。
だから私は、ただ必死に、もがくように生きるのみだった。
別に珍しいことじゃない。
あのときは世界中、そんな人間ばかりだった。
そんな私の人生が変わったのは、初めて教会から施しを受けたときだった。
教会は、貧しい人々に施しを与えていたのだ。
あの教会を悪く言う人はたくさんいた。
ある人は、無意味だと。
ある人は、偽善だと。
実際、あの教会が誰のどういう意図でできたのかは知らない。
また、偽善だと言う声も、わからなくはない。
教会が貧しい人々にただ食べ物などを分け与えるのは、無責任なのだ。
だって、教会が全ての貧しい人々に毎日施しを与えるのは不可能なのだから。
いくらやっても、きりがない。
でも、私は教会を悪く言う気にはならなかった。
なぜなら、私は望んで施しを受け取ったのだから。
差し出されたとき、迷わずに受け取った。
その時、初めて"生きたい"という感情を理解した。
そして、微量ながらもそれを応援する教会を、立派だと思った。
これが、聖女を目指すきっかけだった。




