閑話 まるで…。
王子殿下視点
パーティーについてからのあいつはどこか落ち着かない様子だった。
多分、聖女の伝説を聞かせたあたりから。
実際のところ、聖女の話は代々国に語り継がれているだけで、真偽のほどはわからない。
ただの根も葉もないお伽噺話かもしれないし、本当にそんな人がいたのかもしれない。
聖女の話をしたことで、俺の心は幾分か落ち着いた。
とりあえず、あいつを今日見て思ったことは忘れることにした。
でないと、まともにパーティーに参加できそうになかったからな。
…そう思う時点でもう手遅れなのかもしれないが。
まあとりあえずそんなわけで俺は平静を取り戻した訳だが…。
その後は、あいつが何故か取り乱しているようだった。
パッと見は普通だったが、遠くを見るような瞳をしていた。
特に、婚約を発表したとき。
まるで、遠い昔を思い出しているようだった。
あいつは、俺と同じ子供のはずなのに、何故あんなに懐かしそうな目ができるのだろうか。
少し引っ掛かりはしたが、特に変な様子も他になかったので、あいつを送っていった後は、普通に城で休んだ。
あのあと、あいつが部屋で一週間ほど寝込むとは、露ほども思っていなかったのだ。




