13 …疲れたな。
はぁ、疲れたな。
あれから、殿下とダンスを踊って、他の方とも踊って、婚約発表も済んだ。
反対とかもあるかと思ったのに、みんなで祝ってくれた。
口々に、おめでとうございますルラーナ令嬢、おめでとうございます、と言う姿は本心から言っていることが伝わった。
それで、本当に平和なんだってことがよく分かって、何だか感慨深かった。
…殿下から私の昔の話が出たからかもしれない。
思えば、この世界に生まれてから昔を思い出すことは少なかった。
ふとしたときに昔と比べることはあっても、さっきみたいに前世の自分を他の人の口から聞くことはなかったから。
人が前世を忘れていることは、幸せな来世を送る上での必須条件なのかもしれない。
どうしても、時々、前世に引きずられてしまうから。
だから、なるべく忘れようと思っていたのに。
それに、あのやりきった前世を思い出したら、今世で生きる気力が無くなりそうだった。
私はそれが怖かった。
なのに。
私が思っていたよりも、ずっと私は大きかった。
…何故、私はこんなに昔のことを思い出しているのだろう。
やりきったと思っていたのに、心残りがあったのだろうか。
前世から達成感を覚えて、無気力になったのだろうか。
それとも、ただ疲れているだけなのだろうか。
気付いたら、パーティーは終わっていた。
家に帰って、自分の部屋の扉を閉めていた。
いつの間に。
情けない。
感情の制御は、聖女になる上での基本項目なのに。
あれ、聖女になる?
違う。私は今は…
私は混乱したまま、ベッドへ横になった。
そのまま、私は長い夢の旅へと落ちていった。