12 良いんですかね?
あのまま何事もなく馬車は進み、私は今パーティー会場にいる。
やっぱりお城のパーティーだけあってとてもきらびやかだなぁ。
食事をしたり、ダンスをしたり、みんな思い思いに過ごしている。
…考えていたより堅苦しくないな。
「お前は初めてのパーティーだろう。どうだ?」
王子殿下が気遣うように聞いてきた。
「…思っていたより自由な感じですね。もっと貴族の腹の探り合いとかを想像してました」
そう、私はパーティーと聞いた時そういうのを想像していた。
ひょっとしたら、それも行くのが億劫だった理由かもしれない。
「ウチの国は長い間政治が安定しているからな。わりと貴族も平民もほのぼのしているのが特徴だ」
なるほど、それは良いことだと思う。私が前世で生きていた時は、世界中が荒れていたのだから。
「代々の国王陛下の治世のおかげなんですね」
「それもあるかもしれない。だが、一説ではこの国を訪れた聖女のおかげだと言われているらしい」
「…聖女?」
「ああ。数百年前、この地を訪れた聖女がこの国に潤いと繁栄をもたらしたらしいという伝説が伝えられている」
「…数百年前…」
「ああ、そうだ。その聖女が訪れる前は国中が腐敗していたらしいからな。その聖女は一体どんな秘術を使ったんだろうな」
「…別に、特別なことは、何も、してないですよ…」
「?何か言ったか?」
「…いいえ、何も…。…それより、…せっかくパーティーに来たんですから、何かパーティーらしいことをしましょう」
「そうだな。じゃあ、ダンスでも踊るか?婚約発表はパーティーの中盤らしいから、それまでは自由がきくぞ」
「…そういえば、私殿下といても良いんですかね?」
「構わない。公爵も忙しいらしいからな。まさか令嬢を一人で置いとく訳にもいかないし。」
「殿下は挨拶周りとかしないんですか?」
「俺は寄ってきた奴を適当にいなすだけだ。」
「なるほどー」
私が納得したところで、私達はダンスを始めた。
人の視線を感じたような気がしたが、恐らくみんなこのパーティーの趣旨を理解しているのだと気付き、まあそれなら仕様がないと思い直した。
こうしてパーティーは、刻々と進む…。