閑話 何故だろう。
王子殿下視点
あいつの着飾った姿を見て、思わず見惚れてしまった。
こないだ、俺のイタズラに巻き込んだことを反省して、俺はなるべく紳士らしい態度をあいつにとることを決めていた。
なのに、あいつに指摘されるまで、褒めることも忘れて見入っていた。
初めて会った時は特に何も思わなかったのにな…。
化粧の力に恐れ入った。
特にあいつが笑った姿は、瞼に焼き付くほどで、これじゃあまるで…。
内心混乱しているなかで、感想を催促されたものだから、つい率直な本音が、口からポロリと出てしまった。
なのに。
あいつは普通に笑って返しただけだった。
まるで、社交辞令を受け止めるみたいに。
そう思ったら、胸の奥が傷ついたような気がした。
それでふと気付いた。
ああ、俺は思っていたよりずっとあいつに入れ込んでいたんだな…。
初めは、婚約を煩わしいとさえ思っていたのに。
婚約を、お互いの虫除けのためだと分かっていたはずなのに。
何故だろう?
いつから?
出会ってからまだ一年も経っていないのに。
何処かで、恋はするものではなく落ちるもの、と読んだのを思い出してドキリとした。
…そんな。
…まさか。
俺は必死に平静を取り繕ってあいつをエスコートしてパーティー会場へ向かった。
しかし、俺の心は掻き乱れたままだった。