91 帰ろっかな。
「悪いね、またせた」
「いいえ」
淡々と言葉が紡がれた。目も合わせないで言うその言葉は逆に………絆の深さを物語っている。
「ど、うしてお父様がここに……?」
「あれ? 伝言聞いてない? カナちゃんに頼んだんだけど」
誰だ、カナちゃんて。
「その方に、何と?」
「『里帰りするから、アルルもおいで』って」
・・・・・・。
………あれかッ! ………つまりカナちゃんって、カナヨルタ校長先生(※私の母国の校長先生)ですかッ!
―――お父様。マイペースなのも結構ですが、守るべき最低限のルールもあると思うのです………蒸発の件然り。
「ちょっと遅いから、迎えに来たよ」
………軽いな! 誰のせいだと思ってるんです!?
……………っと、私は令嬢、私は令嬢。
「シャーヴァイス・ルラーナ。無駄口は噤みなさい」
「アモルサラン。何度も言うけど僕の名前は、シャーヴァイス・ド・ルラーナだ」
途端にヒヤリ、と冷気が漂ってきた。
「それなら私も、レミとお呼びください」
「僕は還俗しただけで、それが正式なんだ。君みたいなハリボテとは違う」
「ほぉお、面白いことをおっしゃいますね」
「事実だ」
………仲が悪い。
一瞬二人敵になったのかと思ったけど………むしろ、私は無視されてる勢いだ。
………帰ろっかな。




