85 ……………魔法?
『………僕はあの人に、恩がある。そしてそれを昔、仇で返した』
『だからせめて今世では、ドロドロに甘くしてあげたかった』
『あの人が望むなら、僕はどうなったって構わなかった。そのかわり、あの人を幸せにしてあげたかった』
『……………でも、うまくいかないね』
『アモルの魔法は、当代の聖女によって解かれてしまった』
『………そうそう、あの子は意外とやり手なんだよね』
『僕はもうここから出られないけど』
『君はここに戻れる』
『頼めるのは、君しかいない』
『どうか、アルルを――――』
何か夢のようなものを見ていた。深く眠っていたみたいで、すうっと上っていくように目が覚めた。
目が覚めると………
目が覚めると…………っ、ここどこだ?
見上げると青く晴れた空…………白い雲が浮かんでる。
優しい風までそよそよと吹いていて、実に平和。
………長閑だ。うん。それは良いが。
……………………何故、こんな場所に?
…………落ち着け。僕が覚えている最後の記憶は、公爵が笑って僕に、魔法をかけるって…………。
…………魔法? 何のだ?
というか、魔法って? 呪いのようなものはあったはずだが、あんないかにも童話の魔法使いが使いそうな出来事は半ば現実とは思え………
うん? というかなんだか身体に違和感が。
やたら軽いような気がするし、バランスが取りにくいような………
……………………ああっ!?




