01 どういうこと!?
私は生前、世に聞こえた伝説の聖女だった。
慈悲の女神と呼ばれ、ありとあらゆる地域を巡って施しを与えた。
特別な能力はない。ただ容姿と運がよかっただけだと思う。
それなりに幸せな人生だった。
いろんな場所や地域を知れて、人の役に立つことができて、たくさんの人に慕われて、囲まれる中で息を引き取った。なかなかの年だったし、大往生と言えると思う。
不満は、少しはあった。例えば、若い頃にもっと自由に暮らしたかっただとか。恋愛を、してみたかっただとか。
でも、願いが全て叶う人生なんて無いだろうし、それなりに満足していた。
ああ、このまま昇天するのか。
やりきったなぁ。
死ぬときも、そう思ったはずだった。
…次に目が覚めると、とても眩しいところで、誰かに抱き上げられていた。
ビックリして、つい声を上げてしまう。
「オギャア、オギャア!!」
…うん?んんんー?
「おお、生まれたぞ‼」
「元気な、女の子だ!」
…?…?!
「ご容姿は、奥様にそっくりですね‼」
「いや、目と髪の色は旦那様の色だ。これで、ルラーナ家は安泰です!」
私はパニックになって年甲斐もなく泣き続ける傍ら、頭の片隅で考える。
…え、泣いてるのって、私だよね?
…あれ、私、死んだよね?
…え、え、一体、
…どういうことー!?