第6話 予言の書
役柄変更につき日本の女神の名を日美華に変更しました。
ディアベル(山田さん)が東方女神の4人に復讐を誓っている頃、世界は平和の時を終え、乱世へと大きく動き出そうとしていた。
極東に火の元と呼ばれる島国がある。
地球で言えば日本にあたるエルフの国だ。
※1 エルフは人間よりも3倍から5倍の寿命があり、長い耳を持ち、ほとんどのエルフが緑色の髪をしている。
そして火の元は現在、高雷帝国の本拠地である。
高雷帝国はかつては新鮮(地球で言う朝鮮)も支配していた、否、火の元が新鮮に支配されていた。
高雷帝国の発祥の地は新鮮であり、かつては新鮮に帝都があった。
新鮮と火の元の立場が逆転したのは今から何千年も昔に遡る。当時新鮮に本拠地を置いていた高雷帝国の皇女が火の元の王に降嫁した。
その後皇女は王子を産んだのだが、その王子が後のシーモア王だ。シーモアは王になると母の帝位継承権を主張し帝位簒奪に成功した。
その後、数多の紆余曲折を経て新鮮は高飛帝国を称するようになり、火の元の高雷帝国から独立する。以後、火の元の民は浅黒い肌をした新鮮の民を、ダークエルフと呼び忌み嫌うようになったのだ。
◇◇◇
火の元の高雷帝国の宮殿で、やがて世界を動乱に巻き込む事になる計画がジョン=エンブリオン皇帝と愛娘である第4皇女エレノアの間で進められていた。エレノアは淡い緑色の美しい髪に、雪のように白くなめらかな肌を持つエルフ族でも屈指の美少女だ、そのため皇帝が最も寵愛する皇女でもある。
「それでエレノア、エリック王の返答はいかがであった?」
「はい陛下。エリック王はルミナ王妃と大変仲睦まじく、高雷帝国から側室を迎える気はないとの事です。ですが王太子アレキサンダー殿下の正室になら高雷帝国の姫を迎えても良いとおっしゃています」
「アレキサンダー殿下はまだ生まれたばかりの赤子ではないか……。ふむ、まあ良い、人族は成長が早いからそれで手を打とう。で、もう1つの方の提案はどうだった?」
「はい、残念ながら高雷帝国が裏切らぬ保証が無い限り、危ない道を渡るつもりはないと仰せです」
「ふっ、我らが相手でも油断せぬとは、流石は弥生様が予言した王だ。それで、我らが王は何が所望なのだ?」
「高雷帝国が持つドラゴン玉を預けるのなら、国の命運は掛けてローア帝国と戦うとの事です」
※2 ドラゴン玉は、S級ダンジョンの100階層にいるラスボスのドラゴンを倒した時に得られる魔力石である。ただし唯一無二の物であるため、倒したドラゴンがダンジョンの加護により復活したところを再び倒しても2個目は落とさない。
※ダンジョン内にいるあらゆる魔物は、冒険者に殺されてもダンジョンの加護により1日で復活する。
※3ローア帝国は血中海沿岸を支配する巨大帝国。地球のローマ帝国に相当する。
「ドラゴン玉か……」そう呟くと皇帝は目を閉じ、顎の髭をさすりながらしばし考える。
「……よかろう、ならばドラゴン玉を預けようでは無いか!」
「父上、成りません! ドラゴン玉は帝国の玉璽よりも大切な、エルフの命でございます!」
「案ずるなエレノア、我等が裏切らぬ限りエリック王は決してドラゴン玉を破壊したりはせぬ」
「ですが陛下――」
「くどいぞエレノア! 御先祖の弥生様が残してくださった予言書にはハッキリと書かれておる。世界を制する者と縁を結べば子孫は繁栄し、結ばねば絶えると」
「っ!」
エレノアには返す言葉が出て来ない。
これまで先祖の弥生の残した予言の書が外れた事は1度も無かった。
そのためエレノアは1年半前、エリック王によるディアベル=ロートブルグ王太子の暗殺にも協力した。
エルフでも屈指の美しさを持つエレノアに、父ジョン=エンブリオン皇帝はエリックを篭絡するよう命じた。だがエレノアはエリックが好きでは無かった、むしろフードを被って顔を隠したりと好意を寄せられぬよう努力をしたくらいだ。
特にエリックがディアベルの婚約者ルミナを強姦した時は堪えた。
エルフの禁術・催眠魔法でエリックに協力したのだが、ルミナの意志は驚くほど固くよく耐え忍んだ。エレノアが半年もの長い間ルミナに催眠を繰り返す事で、ようやくルミナをエリックに心変わりさせる事に成功したのだ。
だがエレノアの目には、エリックの子供を産んだ今でもルミナの心の中には、死んだディアベルへの気持ちが残っているように見える。ゆえに未だにルミナ王妃を見るたびに哀れさと、申し訳なさで胸がいっぱいになっていた。
もしも弥生の残した予言の書がエリック王でなくディアベルを指し示していたなら運命は変わっていたに違いない。
その弥生の残した予言書に書かれている、世界を制する者についてのメッセージは5つある、それらを要約すると――
1つ――世界を統べる者は神聖暦666年に明らかになる。
2つ――彼の者は古のメシア帝国の流れを汲む者である。
※4 メシア帝国はかつて人族を統一していた王朝である。メシア帝国の滅亡により帝国領は主に西のローア帝国と東のケルシア帝国に分裂した。
エレノアたちが調べで分かった事は、メシア帝国の皇室はことごとく弑逆され、密かにその血脈を受け継いでいるのがローア帝国の北にあるロートブルグ王家であるという事だった。
3つ――彼の者が光とするならまた影と成る者が存在する。影は王位を受け継ぐべき光の身分を奪う。
神聖暦666年、ディアベルの誕生によりエリックは第1後継者の座を追われた。
そしてエルフ語ではエリックは永遠に力強く続く光を意味し、対してディアベルは悪魔や鬼畜そして影を意味していた。
もはや誰が光であり影であるかは、予言の通り神聖暦666年に明らかとなったのだ。
だがすぐには確認が出来ないものが1つだけ残っていた。
4つ――彼の者は転生者である。
これを確認するためにはエリックがある程度成長するのを待たねばならず、またその時までに接触できる状況を作って置く必要があった。
予言書の最後のメッセージが、弥生の信者である皇帝を強く動かした。
5つ――光を助け影を討ち光と縁を結べば子孫は栄え、助けねば子孫は絶える。
栄えるか滅ぶかの2択しかないと知ったジョン皇帝はメシア帝国の末裔であるロートブルグ王家にエレノアを外交官として派遣し、ロートブルグ王家と積極的に交流を図った。幸いエレノアは転移魔法の使い手であるため距離の壁は無かった。
※ 転移を出来なくする転移無効結界の構築は容易であるため、全ての国が指定場所以外に転移出来ないように国内に結界を張っている。そのためエレノアは冒険者ギルドを通じてあらかじめ転移許可をロートブルグ王家に打診し許可を得た。
ディアベルが産まれてから8年後、エレノアは12歳になったエリックに接触し彼が転生者である事を直接聞いて確認した。
エリックが転生者である事は数年後に明らかとなった。
その証拠は、表向きはディアベルが主導して行った事になっている数々の目新しい政策だ。それらをディアベルに提案し、実際に行動に移したのがエリックだとエレノアは知っている。
※実際の所はディアベルの元にエリックが通いつめ、王太子の代わりに私が実務をやりましょうと重臣や役人と交渉し、エレノアに自分の発案であるかのように見せたのである。
エリックが予言書に書かれている「世界を制する者」である事を示す、全ての条件を満たした事でジョン=エンブリオン皇帝は、エレノアを通じてエリックにあらゆる協力を惜しまない旨を伝えた。
それから1年の間、エレノアは禁術である催眠魔法をルミナや数々の重臣に施し、エリックの王位簒奪の手伝いをした。
エリックの取ったやり口からエレノアは大きな不安を抱いたが、地位が人を作るの言葉どおりこの1年半でエリックは王として、また人として大きく成長している。ゆえに予言書は正しかったのだと、最近は思えるようになって来ていた。
――ゆえに、エリック王にエルフの命運を委ねる事に同意する事にする。
「……かしこまりました。ではエリック王に帝国のドラゴン玉をお預けしに参ります」
「うむ、それと大金貨を100万枚届けよ」
「えっ!」
あまりの金額にエレノアは驚愕で目を見開いた。
大金貨1枚は金貨100枚分である。つまり金貨1億枚分なのだ
「そなたは賢いがやはりまだ若いと見える、此度の戦は何としても短期で終わらせねばならぬのじゃ」
「それは分かっております。ローア帝国はエリック様のマクガイア王国よりも遥かに大きな国です、長引けば地力の差でこちらが不利になりましょう」
「それだけではない、全ての種族がこれまであまり他種族と戦争をした事がない。ゆえに他種族を仮想敵国とした戦術や装備を持つ国はほとんどない。それはローア帝国軍とて同じ、今ならエルフの加勢を知らぬ奴らに魔法で圧勝する事が出来る」
「流石は陛下です。傭兵などかき集めるだけかき集め、ローア帝国の主力をおびき出すのでございますね」
「そう言うことだ、戦を長引かされ魔法耐性の優れた防具や戦術を開発される前に叩き潰す算段を、しっかりとエリック王と相談して参るのじゃ」
「承知しました陛下」
――動乱の足音がすぐそこまで来ている事をディアベル(山田さん)は知る由もなかった。
第3回 東方女神ランキング 年齢編
1位 魔導師ブルーナ 51歳 (ダークエルフ)
2位 戦士ミラ 18歳
3位 勇者リアナ 17歳
4位 聖女ルチア 17歳
ディアベル「以上を持ちまして1位を2度も獲得されたミラ様が優勝に成ります」
ブルーナ 「ちょっと待つの! 最後の年齢編はやる必要がなかったの!!」
リオナ 「あたしまだ優勝してないんだけど!」
ルチア 「優しさランキングなら1位でした」
ディアベル「わかりました、では次回は美少女ランキングをやりましょう! 山田さんチャンスでポイント3倍です!」
リオナ 「山田さんはあたしの契約獣なんだから……、分かってるわよね?」
ミラ 「やまだぁ、まさかあたいに恥はかかさないよな?」
ブルーナ 「1位じゃなかったら大爆発なの!」
ルチア 「ふふふ」
ディアベル(……美少女ランキングは無しと言う事でm(__)m)