第3話 勇者パーティ、東方女神との出会い
現実世界に帰るとそこは死体置き場だった――
「うおおおおおおお!」
――俺の顔の前には腐敗して目が飛び出た男の顔があった。
――精神世界は意外と時間の流れが早いので、動かない俺が死んだと思ったゴブリンがここに捨てたのだろう。
慌てて立ち上がると――えっ! このネックレスと服は……。
(……リリアナ?)
――近くには母上の遺体もあった。
そうか精神世界に何時間も行ってたから、死体置場に捨てられたのか。
あそこの時間の進み具合は意外と早いからな。
俺はリリアナと母上を死体置場から引きずり出しすと、
近くの林に穴を掘り埋葬する事にした。
リリアナが宝石や服を身に付けていなかったら分からなかった――母上が着せてくれたのだろう。
だが母上の方は身籠っていた子供を取り出すため腹を引き裂かれ捨てられていた。
俺は埋葬を終えると――取り合えず屋敷から離れる事にする。
目指すは北の巨人族の国だ。
巨人族は地球で言うと西はイギリス、東はロシアまでの広大な地域を支配する北方の王者だ。
巨人はゴブリンを目の敵にはしてないから比較的安全なんだ。
まあゴブリンを相手にしてないとも言うけど……。
ともかく巨人族の国で小規模なゴブリンのパーティを見つけて仲間にしてもらい、そして夜中に寝首をかいてスキルポイントを稼ぐ作戦だ。
それを繰り返せばあっと言う間に最強ゴブリン様の誕生ってわけだ。
ククク、俺って天才だな!
小規模なゴブリンパーティの仲間に入れてもらうために俺はスキルポイントを交渉に振ってある。
【名前】 ディアベル=ロートブルグ
【種族】 ゴブリン
【ランク】 ゴブリン
『スキル』
【新】交渉術 1/3
※1ポイントに付き交渉力が100上昇。
『アビリティ』
【新】ゴブリンフェロモン
※手籠めにした女性の自殺を防ぎ、繁殖力を高める。
まだ交渉術しかないので早く筋力や体力、剣術などのスキルもが欲しい。
早くはポイントを稼いで強くならないと、女神バンビが言ったようにそこらの雑魚のおっさんに殺されかねん。もっと言うなら今の俺は子供だ、人間の子供でも殺せる。
現在地は小高い山の上だ。
俺や母たちは山の上に建てられた貴族の屋敷の廃墟にいたのだ。
すぐ下には小さな森があり、それを抜けたところに街が見える。
なので取り合えず街まで行く事にする。
ここがどこなのか知る必要があるし、ゴブリンに破壊されていればまだ何か戦利品が落ちているかもしれない。
屋敷から街まで続く道が見えるのでそれに沿って歩く、まあ魔物のいる森の近くに屋敷は建てないだろうから道中は大丈夫だろう。
まだ昼だと言うのに曇り空のせいか森の中は薄暗かった。
トボトボと歩きながらボケーとこれまでの事、これからの予定を考える。
恐らくすぐに最強に成れるだろうけど、どうやってエリックを殺してやるかだな。
特に――俺を裏切ったルミナを後悔させてやりたい! 俺を――ドキッ。
ルミナの事を考えると、ルミナへの強い思いが、憎しみと愛しさが――俺の胸を締め付ける。
ルミナは王子の俺ではなく、純粋に俺を好きになってくれた初めて人だ――平民としてルミナに近づき王子の身分を教えたのは付き合い始めてからだ。
エリックの野郎が強姦さえしなければルミナが俺を裏切る事は絶対になかったはずだ。それに父親を楯に取られてたんだルミナは悪くない……。
そう頭では分かってるいる。
――だが、俺の命よりエリックを選んだのが許せない!
――エリックに抱かれた事、孕んだこと!
エリックが言うにはルミナはトリプル○○だ、それは確立で言えば数百兆分の一でしか生まれてこない奇跡の女だ――この俺のスキルボードと同じで唯一無二の者代わりなどいやしない!
それを!! それを!! あの野郎は奪いやがった! 王位くらいならくれてやるがルミナだけは許せん!
この恨みを晴らすためエリックの野郎を国ごと真正面から叩き潰してやる! そして目の前でルミナを犯してゴブリンの子供を孕ませてやるんだ!!
歩きながら延々と復讐の方法を考えてたせいで、
忘れてしまっていた――
「魔物がいたぞ!」
「っ!?」
――自分がゴブリンだと言う事を。
気付くとすぐ目の前に四人の女性冒険者がいた。
森の道の20メートルくらい先が曲がり道になっていたので、気付かずに鉢合わせしてしまったのだ。
そして魔物の俺は本能的に理解した。ここにいる四人は自分よりも圧倒的に強く逃げる事は不可能――その力の差を感じた俺は金縛り状態になった。
「おめでとうリオナ、あれがお前の初めてを奪う魔物だぞ」
「リオナよかったの、初めての相手が見つかったの」
「ちょっとやめてよ2人とも、あれゴブリンじゃない」
「ミラちゃんもブルーナちゃんもリオナちゃんに酷いです、もっとかわいい魔物にしましょうでした」
(なんの話だ?)
ゴブリンになった俺は耳がよくなり、四人の話が丸聞こえだった。
「仕方無いだろルチア、リオナがビーストテイマーになってみたいって言うから高い金を出して契約魔法を覚えたのにいっこうに魔物を仲間に出来ないんだから」
「そうなの、それに次に見つけた魔物を絶対仲間にして見せるって言ったのはリオナなの」
「分かったわよ、どうせ今度も仲間に何てならないし……」
そう言うとリオナと呼ばれた、黒髪の美少女はジッと俺を見つめて来た。
「どうだ心が通いそうか?」
「ちょっとミラ黙ってて、逃げちゃうでしょ」
「逃げたら殺すから大丈夫なの」
――それは全然大丈夫じゃない!!
再び美少女に見つめられた俺は――
「はい、バッチリ心が通いました!」
「「「「しゃ、しゃべったー」」」」
――四人の美少女たちはものすごくビックリしていた。
「ちょっとあなた喋れるの?」
「はい、前世が人間だったんだと思います」
美少女だからと信用したりはしない、全てを話してエリックに売られたらかなわん。
「ちょっとどうする? 喋るゴブリンなんて初めて、捕まえたら高値で売れるんじゃない?」
「いや、喋れるんだったら色々雑用に使えるだろ」
「わたしは売るのに賛成でした」
「うちもなの」
ヤバイ! 変なところに売られたらかなわん!
俺は交渉スキルを発動させる!
「何でもします! 仲間にしてください!」
「「「「……」」」」
「……ゴブリンさんは肩たたき出来ますか、でした?」
ルチアと呼ばれた聖女風の金髪の少女が聞いて来た。
「や、やらせてください!」
その美味しそうな乳も揉んでやるよ!
「剣術の相手はするんだろな?」
ミラと呼ばれた戦士風の少女だ。
四人の中で一番胸が大きく、赤毛をして気の強そうな子だ。
「頑張ります!」
押し倒して夜の相手もしてやるよ!
「魔法の練習代になるの」
「えっ……! が、頑張ります!」
ブルーナと呼ばれた少女だ。
うん、この一番おっぱいの小さな子――でもCカップはあるだろう――はダークエルフだな、緑色の髪と浅黒い肌に長い耳だ。
練習台とか、ふぜけんな! お前の魔法を躱して魔法のようにその胸を大きくしてやるよ!
「リオナちゃん置いてあげましょう、でした」
「せっかく高い金を出して契約魔法を習ったんだ、契約しないと意味ないだろ」
「リオナ、次の魔物を絶対に仲間にするって言ったの」
「しょうがないなあ。でもあんたゴブリンだから、絶対に私達に逆らえないように奴隷魔法も掛けるけどいいわよね」
いい訳あるかぁー!
スキル交渉レベル1発動!
子供の可愛さ発動!
「ぼ、僕が信用出来ないんですか?」
潤んだ目でリオナを見つめる。
「はあ? ゴブリンなんか信用出来るわけないでしょ! イヤなら売るから別にいいわよ!」
なにぃぃぃ! 交渉スキルが通用しないだとぉ!!
「ま、待って下さい! 奴隷魔法も掛けてもらっていいです、だからお側に置いて下さい!」
しまった、別の美少女に売ってもらった方がよかったか? イヤ、へたに変なおじさん何かに売られて○の穴掘られたら人生終わってしまうしな。
リオナは俺の左手を取ると「初めての契約獣がゴブリン何て……」とブツブツ言いながら俺に契約魔法と奴隷魔法を掛けた。
この前まで異世界王子だったのに、契約獣だか奴隷獣だかにまで落ちぶれてしまった。せめてもの救いはこの四人が美少女で胸が大きい事だろう。
この屈辱はスキルを上げてベッドでヒイヒイ言わせて晴らさせてもらうぞ!!
「これでようやくリオナに契約獣が出来たわけだな。お前はみんなの奴隷獣でもあるんだから、これからはあたしの命令は絶対だ、わかったな」
ミラが偉そうな顔で言う。
(ふっ、ベッドの上じゃあ俺の方が偉いんだぜ)
「これから毎日肩たたきお願い、でした」
ルチアと呼ばれていた聖女風の巨乳少女が優しく微笑みかける。
(聖女様、任せとけパンパン叩いてやるよ、ぐふふ)
「うちの魔法の練習代になるの」
――うんそれはもう聞いた。
「ちょっとみんな、これはあたしの契約獣なだからね、あたしが優先なんだからね!」
最後にリオナと呼ばれた勇者風の少女がワタシが一番だと主張する。
確かにこのメンバーの中では俺の評価は一番高い。
リオナは俺好みのルミナに似たいやらし体つきに、俺の初恋の女性に似た顔立ちをしていた。
――安心しろ、最重要ターゲットはお前だ!
それからしばらくの間、俺の所有権を争って四人の少女の攻防が続いた。
「魔法契約を習う代金はみんなで払ったからみんなのゴブリンだろ」とかなんとか。
(俺様ってば、ゴブリンになってもモテモテだな! ワッハハッ!)
ーーその後結局リオナが折れ、四人仲良く俺様を共有することで落ち着いた。
(まったくバカな争いをしおって、俺様は俺様のもんだと言うのに、わっはっは)
「じゃあ可愛い魔物を探すついでに受けてたゴブリン退治のクエストに行こっか?」
「え」
リオナの発言にドキリとする、心当たりがすごくある。
「ゴブリンなんかさっさと倒すの」
「そうだな。この1ヶ月、誰かさんのせいでこんな雑魚クエストしか受けていないからな」
勇者リオナの「頑張っていこう」っぽい発言をして俺が来た道を歩き始めた。
「ゴブリンたちはこの道の先にある屋敷にいる、でした」
聖女ルチアの発言に俺は驚愕する。
(やっぱりか、そこ俺の居たところじゃん!)
「じゃあ、さっさと終わらせよう」
リオナが先頭を切ってどんどん歩き出す。
そして――
(やっぱりここかあ!)
――大きな屋敷の門の前にたどり着いた。
「どうブルーナ、ゴブリンロードはいる?」
「魔法探知に大きな反応はないの。せいぜい居てもホブゴブリンなの」
リオナの問にブルーナが応える。
――中の様子が分かるとは、どうやらブルーナはかなりのやり手らしいな。
「じゃあ誰がやろっか」
「うちのエクスプロージョンで一発なの、でも中に人間もいるの」
「じゃあ、わたしかミラだね」
「わたしも大丈夫でした」
「殺りたい者が殺ればいい」
ミラがそう言うとブルーナも含めて全員が「やるー!」と応えた。
(ヤバイ! この子らゴブリンを殺る事にためらいが無い! いや、むしろ殺るのが好きらしい!!)
ドカンとブルーナが魔法で門を吹き飛ばすと、ピクニックに行くかのように平然と敷地に浸入した。
すると爆音を聞いたゴブリンたちがわんさかと出てきた。
――そして虐殺が始まった!
目の前の光景に俺は唖然とする。
(強い! 強すぎる!)
迎撃してきた20匹のゴブリンを瞬殺し、四人が建物の中に入って行く――あっ。
「待ってくれ、いや待って下さい!」
(俺もゴブリンを殺してスキルアップしたいんだ!)
俺が入ると屋敷内は既に地獄絵図だった。
急いで死んだゴブリンから武器を奪い取った俺は、必死で生きているゴブリンを探す。
そして少女達が二階に行ったので、俺は逆に階段を降りた。
階段を下りた先は地下牢で――
「あっ」
――隠れているゴブリンの子供を三匹見つけた。俺と同じ人間で言えば6、7歳のゴブリンだ。
(もしかしたら母上か妹が産んだ俺の兄弟か? まあそれはどうでもいい。問題はゴブリンの俺が、あどけないゴブリンの子供を殺した所を、あの美少女たちが見たらどう思うかだ……)
ガサッ
後ろの音にドキリとして、慌てて武器を構えて振り向くとダークエルフの美少女ブルーナがいた。
そして彼女は俺を見て、
ニィと笑うと――
「ドン」
――と言って、まるで鉄砲で俺を撃つかのような仕草をした。
(は? なに考えてんだこいつ?)
グホッ
――俺は突然、血を吹き出した。
――見ると腹に大穴が空いていた。
「なん……で?」
俺はバタリとブルーナの足元に倒れ落ちた。
(ああ、この感じはあれだ、俺また死ぬんだ……)
俺は急速に薄れる意識の中で聖女様の声を聞いた。
「ブルーナちゃん、それわたしたちのゴブリンさん、でした」
第1回 東方女神ランキング おっぱい編
1位 戦士ミラ Gカップ
2位 聖女ルチア Eカップ
3位 勇者リアナ Dカップ
4位 魔導師ブルーナ Cカップ