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プロローグ~異世界王子からゴブリンへの転落(前)

 異世界に地球と瓜二つの惑星があった、その星の名はエミリア。

 エミリアは神々が人類鑑賞をよりいっそう楽しめるように地球をベースに創り直したものである。

 ゆえに魔法もあれば魔物も存在する、そんなエミリアの現在の文化レベルは中世ヨーロッパ程度でしかない。


 神々の思惑どおりエミリアは地球よりも鑑賞して楽しい存在となっていた。


 だがそれも大いなる災いをもたらす人物の登場により間もなく終わる事になる。

 その事を知っているのは日本の女神・日美華ただ一人。

 なぜ日本の女神が異世界の未来の事を知っているのか、それは大いなる災いとなる人物の魂を日本から送り込んだ張本人だからである。


 女神・日美華は異世界の星・エミリアをやや緊張しながら霊視により監視していた。

 それは16年前に異世界に送り出した魂がいよいよ最終変化を迎えようとしていたからだ。

 その魂の現在の所在地は地球で言えばユーラシア大陸のルーマニア周辺の山奥である。

(ルーマニアは大雑把に言うとロシアの左下)



 ◆◆◆◆◆◆


 ロートブルグ王家の紋章を付けた1台の大きな馬車が山道をゆっくりと登っている。

 馬車の前方を40名の歩兵と10名の騎士が先導し、馬車の後方すぐ後ろに20名の侍女が、その後ろに10名の騎士と50名の歩兵が続いている。

 護衛している兵士はロートブルグ王室の親衛隊100名。


 そして馬車の中に居るのは俺を含む3人の王族。


 このうち最も重要な人物は金髪の美少年――

 15歳にして名君の器と名高いロートブルグ王家の王太子ディアベル、つまり俺だ。


 俺は6歳で王太子に任命されると学問に励んだ。


 そして12歳で政治に携わるようになると、瞬く間に数多くの功績を上げていった。


 その功績が認められ来年16になれば摂政になり、国政を取り仕切る事が決まっている――父王リチャード3世は病弱なので有能で孝行息子な俺に代わりに頑張って欲しいそうだ。


 まさに順風満帆の人生。


 もちろん婚約者だっている。


 彼女の名前はルミナ=アールスタ。

 俺が彼女と出会ったのは5年前、10歳の頃だった。


 お忍びで街を見学していた俺は無料で治癒魔法をかけてくれる聖女の噂を耳にした。

 しかも凄くかわいいと評判で俺と同い年の10歳だと言うのだ。


 ――これは是が非でも会わねば。


 そう考えた俺はすぐに彼女がいる教会を訪れ、治療の順番が回って来るのををひたすら待った。


 ようやく俺の番になり、彼女の顔を拝めたのは6時間後。

 俺は一目見て確信し、そして決意した。


 ――こいつは最高の女になる、絶対俺のものにしてやる!!


 初めて顔を合わせた俺たちは……互いにしばらく見つめ合った。

 運命の出会いだと思った。

 俺は身も心も痺れ、金縛りにあったように動けなかった。

 先に口を開いたのは彼女の方だ。


 初めて聞く彼女の声は可憐で、

 そして威厳に溢れていた――


「ケガをしてないなら、並ばないでください!!」


 ――すごく怒られた、王子様なのに。


 まあ今となればいい思い出だ。

 俺の紹介はこれくらにして次にいこう。


 俺の前に座っているのがロートブルグ王家の王妃マチルダ――俺の生母だ。


 もうすぐ50歳になるのだが、かつて傾国の美女と謳われただけあってその容姿は30代にしか見えない。


 母は14歳で父王リチャード3世に嫁ぎ今もラブラブなのだが、長らく子供には恵まれず俺と妹を授かったのは30歳を超えてからだった。


 だから俺が産まれる5年ほど前――


 ――後継者を心配した家臣達が協力して父に無理やり3人の側室を押し付けた。

 その結果、生まれたのが4歳年上の異母兄エリックだ。


 俺が生まれたせいで兄は王位継承順位が第二位に下がってしまったが、兄は良い人で俺とは良好な関係を築いている。


 なお王位継承順位は絶対的なものではない――王の意志や家臣の政争で順位がかなり下でも王太子(王位継承者)になる場合がある。


 俺と兄エリックは上手くいっているが、母と側室たちの関係は最悪だ。


 その理由は母と言うより父にある。

 父は第1王子のエリックを儲けると役目は果たしたと言わんばかりに側室の寝所には訪れなくなった――子供のいない側室はまさに飼い殺し状態である。


 一応フォローしておくと父は生来病弱なので……愛する母以外は女を抱く元気が余っていないようだ。


 まあ俺が思うに――


 ――本当に僕のお父さんですか?

 僕はいつもビ〇ビ〇ですよ! と言いたくなる。



 冗談はさておき、(いと)しの妹を紹介しよう。


 母の隣に座っているのが妹の第一王女リリアナ。

 王妃譲りの金髪と美貌で若干14歳にして傾国の美女と讃えられる美少女だ。


 俺も最近は妹でさえ無ければとよく思う事がある。


 厳密に言えば俺の女にする手はある。


 ――近親婚のできる宗教に改宗してしまえばいいのだ。


 そうすれば毎晩目の前の美少女とヤりまくる事が出来る、ぐふふ。


 でもまあ、それをやると俺の人生が詰んじゃうけどな。

 間違いなく、宗教反乱と家臣の謀反であっと言う間にお陀仏だ。


 目の前にある妹の細く綺麗な足を眺めながら、俺は心の中で溜息をつく。

(はあ、もったいないけど諦めないとな)


「お兄様、ちゃんと話を聞いてますか?」


 顔を上げるとリリアナが少しむくれた目で俺を見ていた。


(やばい、エロい目で見ていたのがバレたか)


「んっ、……なんの話だったかな?」


「もうお兄様ったら、昨日のリッチモンド辺境伯の御嫡男の結婚式が素晴らしかったと言うお話です!」


「ああ、その話か……」


 俺たちは昨日、辺境伯の領都で行われた結婚式に出るため病弱な父を残して家族全員で王都を出た。


 当然、王太子である俺の目的は結婚式に出席する事だけではない。


 隣国に発生したゴブリンロードが、数か月前に千匹ほどのゴブリンを率いてリッチモンド辺境伯領に侵入した――幸いすぐに辺境伯が追い返した――その被害状況の視察と民の慰安が俺の目的だった。だったと言うのは既に午前中に仕事を終わらせたからだ。


 ゴブリンが襲った3つの村を視察したが、酷いありさまで完全に壊滅していた。

 それを見た俺は思わず「なぜ追い返すのでは無く、全滅させなかった!」と辺境伯を怒鳴ってしまった。


 叱られたリッチモンド辺境伯は一瞬不服な顔をしたが――


「申し訳ございません、次に来ることがあれば必ずや全滅させます」


 ――とすぐに謝ったので良しとした。


 そして今は馬車に乗り山道をゴトゴトと温泉に向かって進んでいる。


 温泉に行くことになったのは、昨日の結婚式の時に辺境伯夫人が母上と妹に「美人肌になれる秘湯がある」と話したからだ。母上と妹に「行きたい行きたい」とねだられては、予定を変更せざるを得なかった。

 まあ、リッチモンド辺境伯領はロートブルグ王国でも屈指の大温泉地として知られているので、行って損は無いだろう。


 ただ問題があるとすれば、教えられた秘湯が国境付近にあり、たまに魔物が出ると言う話だ。

 そのため万一の事態に備えて異母兄のエリックが、王太子である俺の安全を確保するため、つゆ払いとして40名の王国兵を率いて先に温泉地に向かっている。


 エリックは子供の頃から側室の子と言う立場をわきまえ、常に俺を立ててくれた。

 そして今では俺が偉大な王になると見込んで、俺の政治を積極的に補佐してくれている。

 俺の功績の半分はエリックのおかげと言ってもいいかも知れない、きっとエリックは将来我が国の名宰相になってくれる。


 だからエリックには俺が王国の勢力図を拡大した暁に、公爵の位と領土を授与して報いてやるつもりだ。


 そう、昨日の華やかな結婚式でも、目立たず脇役に徹した忠実な家臣だからな。


「確かに凄い結婚式だったな……」


「そうでしょお兄様、リリアナもあんな結婚式がしたいな」


 ――なぜか“上目づかい”で俺を見るリリアナ。


 その可愛さに一瞬ドキリとしてしまう。

 それを(さと)られないようリリアナから目を逸らすと、俺は意識を“辺境伯の事”に向けた。

 リッチモンド辺境伯は野心家だ、昨日の結婚式も自分の権勢を誇示するため相当の金を注ぎ込んでいた――だが肝心の花嫁の方はと言うとたかだか凖男爵の娘だった。


 俺は思わず苦笑する。


「お兄様、何が可笑しいのですか?」


――リリアナは自分が“笑われた”と思ったのか少しむくれていた。


「いや、リッチモンド辺境伯は俺に取り入ろうとしてるんだと思ってな」


「取り入る?」


「ほら花嫁のリサさんは俺の未来の義姉さんだろ」


「あっ……」


 そう花嫁のリサさんは俺の婚約者ルミナ=アールスタの姉リサ=アールスタだった。


 同い年のルミナとは13歳の時に婚約し、その婚約式で初めてリサさんに出会った。

 その時俺は、2歳年上で女性としてルミナよりも完成されている(特におっぱいが)リサさんに惹かれ、不覚にもルミナとの婚約は早まったと思ってしまった。


 俺の見立てではこの姉妹は王国で一・二を争う美女になる。

 将来は2強、いや妹のリリアナも入れて3強時代がしばらくつづくはずだ。


 出来ればリサさんを側室にしたかったが、残念な事にルミナが俺との婚約を了承してくれた時――


「生涯俺の女はお前だけだ」


 ――などと余計な約束をしてしまったのだ。

 俺は愛する女と交わした約束を反故にするほど鬼畜じゃない。


 これも俺が初めての恋愛で「ハーレムなんかいらないぜ!」って目が曇っていたせいだ。

 俺はリサさんに出会うまではホント、ルミナしか見てなかった。

 まあルミナは最高の女だから後悔はしていない。

 なんせルミナは性格、顔、スタイル、おっぱい――全て最高だ。


 そのルミナが俺の「生涯お前だけだ」宣言を聞いて、

 当然だが――


「わたしも貴方だけが生涯でただ一人の男性です」


 ――と顔を赤らめながら誓ってくれた。


 その時、俺たちは……。

 互いに異性と初めての口づけを交わした――ぐふふふ。



「……なるほどそう言う事ですか。って、ちょっとお兄様また顔が変になってますよ」


「えっ、ああ、すまんすまん」


「もうお兄様は変な顔さえしなければす……」


「……しなければす?」


「そのす……す、素晴らしいお兄様なのになぁ……とっ……」


 ん、何か怪しいぞ。リリアナの顔が微妙に赤いし、それに急に視線を逸らして――ハッ!


 これはさっきの俺と同じ――もしかしてリリアナも俺の事が好きなのか!?

 だとしたら今までリリアナの気持ちに気が付かなかった俺はなんて馬鹿なんだ。


 ――本番さえしなければルミナとの約束を破った事にはならない。


 これからはたくさんリリアナにボディタッチして兄妹の仲を深めていこう、特におっぱいへのボディタッチで!

 美少女の妹のおっぱいの成長具合を確かめるのは兄として当然の権利! いや義務と言っても過言ではない!! ぐふふふっ。


 ゴホンッ。


「兄妹の仲がいいのは良い事ですが、何事もほどほどが肝心ですよ。 それとディアベル、分かっているのならリッチモンド辺境伯に無用な便宜を図ってはなりませんよ」


 どうやら母上は辺境伯が嫌いらしい。

 リッチモンド辺境伯の妹は父が飼い殺しにしている側室の一人だからな、恐らくそれが原因だろう。


「はい、母上」


「お母さま、お兄様は公明正大な方ですもの取り入っても無駄です」


 リリアナは俺を完全に信じきっている目だ。


「はははっ、リリアナそう言ってくれるのは嬉しいがな、どんな人間だって苦言を呈する家臣よりも甘い言葉を並べる家臣の方がかわいく感じるものさ」


「……お兄様もですか?」


「当たり前だ、だから媚びる家臣には常に気を付けてるぞ」


「さすがです、お兄様!」


 リリアナは両手を合わせて、尊敬の眼差しで俺を見つめてきた。

 ううっ、そんな純粋な目で俺を見ないくれ!

 不埒な考えを抱いていた俺の心が痛むじゃないか。




 ○●○●○●



 4時間後。

 俺たちは貴族専用の温泉宿についた。


 山に囲まれ風情のある、なかなかいい所だ。

 だが残念なのは貴族専用とあって少しばかり宿が大きくて豪華すぎる。


「王太子様お待ちしておりました」


 出迎えたのは、異母兄のエリックとその兵士40名。


「兄上ご苦労様です」


「恐れ入ります、兵士たちに辺り一帯を確認させましたが危険な魔物はおりませんでした、どうか安心して宿でお休みください」


 そう言ってエリックが父親譲りの赤い髪をした頭を下げる。


「分かりました。それでは母上中に入りましょう」


 俺たちは宿に入りそれぞれの部屋に移動する。



 ◇


 宿の外見もそうだが部屋の中もすごく和風だった。


 ……。

 ……。


 やる事もないので温泉に入るか……。


 露天風呂に向かった俺は脱衣所で服を脱ぎ、浴室に入る。


 ザバンッ


 いい温度で白い湯気を上げている湯に肩まで浸かった。


「ふうっー、いい湯だ」


 (ルミナにも入らせたかったな。)


 ――婚約者のルミナは体調を崩したため、姉の嫁ぎ先であるリッチモンド辺境伯の領都に残してきた。


 俺は頭まで湯に浸かり、ふと昔の事を考えた。


(あれからもう16年か……)


 16年前、俺は日本の守部海斗と言う大学1年生だった。

 自分なりに勉強を頑張り、関西のとある大学に合格したまでは良かった……。

 だが、その大学の寮に入ったのが運の尽きだった。


 寮では1部屋に4人が寝起きしていた。

 1年生から4年生までの各学年が1人づつの構成だ。

 今思えば俺は4年生の部屋長に嫌われていたのだろう。

 俺を追い出すため毎日のように宴会を朝までしやがった。

 強制的に大量の酒を飲まされた俺は1月も経たないうちに……急性アルコール中毒で死んだ(怒)。




 ……そして女神様に出会った。


 女神は俺に言った。

「わらわは予知夢を見た。さほど遠くない未来に異世界の魔王がやって来て日本を滅ぼす夢じゃ」と。


 理不尽な目に遭って死んだ俺は内心「ざまあみろ」と思ったが、もちろんそれは言ってない。


 女神の話は長かったので結論を言えば――

 俺に“殺られる前に殺って来い”と言うものだった。


 なぜ俺なのかと言う質問をすると――。

 それは俺がそこら辺にいるごくごく平凡な人間だからじゃ、と言う大変失礼な回答だった。


 女神が言うには、異世界の技術レベルを大きく進歩させる事が出来るような人間の魂は大きすぎて、異世界との境界にあるファイアーウォールに引っ掛かってしまい、こっそりと送り込む事が出来ないらしい。


 こっそりとか言ってたから深くは聞かなかったけど――

 要するに異世界の神様は、異世界の魔王の味方と言う事なのだろう。


 ともかく俺は女神と契約を結び魔王を倒すためにこの異世界に転生した。

 だが異世界に転生したからって、勇者になって前線で頑張るつもりなどサラサラ無い。

 魔王を倒す方法は自由と言っていたので軍隊を送るか、冒険者を雇って倒すつもりだ。


 あと異世界に転生するに当たって貰った特典は二つ。

 1つ目は――必修で前世の記憶を失わないと言うもの。

 2つ目は――スキルをレベルアップできる特典。


 だけど2つ目の特典は――


 すごくしょぼかった。


 それは筋力や魔力、剣術などのスキルレベルをどれか1つだけ+1出来ると言うもの。


 ――たった+1とか、いくら何でもせこすぎだろ。


 抗議したが無駄だった。

 結局、悩んだ末に俺が選んだのは貴人転生のスキルレベル+1だ。

 これは良家に産まれる確率が大きくなるスキルだ――もちろんそれ以外に役に立たない、つまり転生する時の一発勝負スキルだ。


 そのスキルのおかげで、俺は見事に大当たりを引きあて王家に産まれる事ができた。




 ――ガラガラ。


 突然入り口の扉が開けられた。


(もしかしてリリアナか!)


 そう考えたのは、今温泉に入る事が許されるのは母上かリリアナしかいないからだ。

 だが母上が男湯に入ってくるなど考えられない。


 ――となるとやはり。


 ドックン

 俺の心臓が期待で自然と早くなる。


「ディアベル、久し振りに兄弟として話をしていいかな」


 白い霧の中から現れたのは――兄だった。

 エリックと俺は二人きりの時は兄弟として話そうと決めている。


「なんだ兄さんか、めずらしいね何か話したい事でも出来た」


「そりゃあ、暫く話していなかったから一杯あるさ」


 そう言いながら兄が歩いてきてチャプンと隣の湯に浸かる。

 そして俺を見てにやけた。


「例えば来年のおめでたい話とか」


「ああ、俺の摂政就任のこと」


「摂政就任の前の予定でもっと重要なものがあっただろ」


「えっと……俺の誕生祝い?」


「結婚だよ結婚、自分の結婚を忘れるなよ、ディアベルはたまに抜けてるよな」


「なんだその事か」


「ルミナはいい女になったよな、性格もいいし、美人だし、胸もでかい、ひょっとしてお前が大きくしてやったのか」


「なっ、そんなわけないだろ。 ルミナは結婚までは駄目だってキスだって1度しかしてないんだぞ」


「なんだキスの初めてはちゃんと頂いてたのか」


 なんか今日のエリックはグイグイ来るな、「兄弟として話す」と言っても節度を守る男だったはずだぞ。


「俺がルミナのファーストキスを貰いたかったなぁ」


「はあ!?」


(言うに事欠いてルミナのキスが欲しいだと!)

 俺は湯からザブンと立ち上がるとエリックを睨みつけた。


 「おい兄貴、一体どうしちまったんだ!」


 俺の取り乱した様子を見てエリックが一瞬笑い――


「いいだろ、同じ日本からの転生者なんだから」


 ――とんでもない爆弾発言をした。


「はあぁぁっ!?」


「気付かれないとでも思ったか、近頃は知られたく無い事を平気で日本語でメモってるくせに」


「な!?」


(あれを見て今まで何も知らない振りをしてたのか!)


 ――こいつは油断できない、いや危険な奴だ!

 ――俺の警戒心が一気に上がった。


「まあそう言うことだ、よろしくやろうぜ」


「いつから、いつから気付いてた!」


「そりゃあディアベルが色々やらかした時にな」


「やらかす?」


「お前ガキの頃からやたら賢かっただろ」


「うっ」


「まあ俺も手伝ったけど、屯田兵を実施して魔物のせいで荒廃した土地を開拓させたり、国債の制度を作って公共事業に投資して産業を活性化させ滞ってた金の流れをよくして税収も増やしたりしただろ」


「うっ」

 バレバレだった。


「他にも……他にも転生者はいるのか?」


「そりゃあいるだろうけど、俺が知ってるのはお前だけだな。それに女神が言ってただろ、異世界の神に目をつけられたくないから日本からの転生者だって事はいうなって」


「……」


 そう言えばなんかそんな事を言ってた気がする。


「でも同じ転生者だって分かったんだからさ、協力して魔王を倒そうぜ!」


エリックが爽やかな笑顔で手を差し伸べて来た。


(以外といい奴なのかも知れない)


 これまでのエリックに対する好印象から俺の警戒心が一気に薄れる。


 俺は――差し出されたエリックの手を取った。




 それからわずかな時間で俺たちはかなり打ち解けた。


「えっ、性交なんてスキルあったの!?」


「性交はな裏メニューってやつさ、女神に聞いたら「あります」だってさ」


「まさかそんなもんにポイントを振るとは……でも+1増えただけだし……そんなに効果はないよね?」


 俺の質問にエリックはニヤリと笑い――


「お前は貴人転生が1増えただけでスゲー効果あったよな」


「!!!」


 ――ものすごい効果らしい。


「なんて言うかさ、肌の相性が良くなるって言うのかな。今の彼女なんか始めは俺のこと嫌がってたけどさ、今じゃベタぼれだぜ」


「そんなにすごいの!?」


「まあ、スキルが見えないから分からないけどさ、転生して俺自体の性交スキル高くなってるのかも知れないな」


「それってもちろん、努力で上がるスキルだよね」


「俺の感じでは多分上がらないだろうな、例えば女の名〇は何万人に一人と言う生まれ持ってのもんだからな」


「えっ、そうなの!?」


「お前何も知らないな、前世でもこっちでも童貞だろ」


「いいだろ、来年には卒業するんだから!」


 エリックは「そうなるといいねー」とニヤニヤ笑いながら茶化してきた。


 その後、名〇にも何種類かあってそれぞれ特性があり、数億分の一の可能性で二つの特性を持つ人もいるとか、それに努力して〇の特性に似た効果を得ている女性がいるとかまで教わった。


 そして驚く事にエリックの彼女はなんと三つの特性を持つトリプル名〇で、初めての夜は瞬殺されたそうだ。


 ――こいつなんてレジェンドな女を引き当てやがったんだ!!


 その後――俺とエリックはスゲー打ち解けた。


 ○●○●○●


 その日の夜は侍女たちを下がらせ、俺と母と妹の三人で家族水入らずで夕食を取った。

 エリックも誘ったのだが、「結婚したら3人だけで食事する機会は無くなるだろ、だから3人の最後の晩餐を楽しめよ」と遠慮されてしまった。


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