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親子喧嘩2


「だ、団長殿……?」



 ヴィクトーリアは事態が飲み込めず、おずおずとガンマを見上げている。



「……おまえは母親に似て、昔から争いごとを好まなかった。機械をいじる事が好きなところまで似ていて……、暇さえあれば度々工房に潜り込んでは技術者を困らせていたものだ。……だから将来、おまえも母親のように、技術者になるものとばかり思っていた……なのになぜ……なぜおまえは騎士を選んだのだ……! 答えよヴィクトーリア!」


「……わ、私は……私には……」



 切っ先を喉に突き付けられ、自分が死に瀕しているにも関わらず、ヴィクトーリアはなおもガンマを見据えて言葉を紡ごうとしていた。



「引け! ……さすれば命だけは見逃してやる。騎士を辞め、アン王女の前から消え去れ……これが最後通告である。騎士ヴィクトーリアよ、そなたを永久にネトリール騎士団から叙任するものとする」


「そ、それは……それだけは……聞けません!」


「……ッ! であるならば、ここで斬り捨てるのみだ」


「私には、守るべき友人がいます!」


「……なんだと?」


「その方は一度、祖国のために命を落としかけました。しかし私はその時、自身の力のなさゆえにその方に何もしてあげられなかった。恨みました。悔いました。友人をこんな目に遭わせた人間ではなく、無力な己自信を。だから私は、その時からその方のそばに一生いて、守る事を誓ったのです!」


「ならばこの儂に力を示せ! その程度の力ではその者を守ることはおろか、むやみに周りを危険に晒すだけだ! おまえの選んだ騎士という道は力がすべて! 優しさは捨てろ! 迷いも捨てろ! ただ目の前の男を殺す事だけ考えるのだ! それが出来ないのであれば死ぬだけだ!」


「それでも、私は……!」


「……これ以上の問答は無用。覚悟を決めろ……!」


「う……うぉぉぉぉぉ!!」



 ヴィクトーリアが喉に突き付けられていた剣に手をかざす。

 すると剣は、光を放ちながらその姿を変容させていった。



「ぬぅ……!?」



 ガンマが突然低く唸り、足元にポタポタと血が滴った。

 見ると、ガンマが握っていた柄が刃に――ヴィクトーリアが手をかざした部分が柄となっていた。

 ヴィクトーリアは両手で剣をすばやく持ち直すと、そのままガンマの喉元に剣を突き付けた。

 陣を必要としない錬金。

 俺が与えた魔力による覚醒か、追いつめられたことによる魔力暴走かはわからないが、これで形勢は一気に逆転した。



「成程。これがおまえの得た力か。……やれ、ヴィクトーリア。その剣で儂の首を落とせ。それでこのくだらん因縁も終わる」


「できません……!」


「これは命令だ」


「そんなの……聞けません……!」


「この……莫迦者めが! 覚悟を決めろと言ったはずだ! 儂を殺さなければおまえは一生――」



 ──ガランガラン……ガラン……!

 ヴィクトーリアの手から剣が滑り落ちる。



「あなたを……お父さんを殺す覚悟なんて……したくない……」



 ヴィクトーリアは絞り出すように言うと、大粒の涙を流しながら、その場にぺたんと座り込んだ。



「そうか。おまえはまだ儂を――」



 ガンマが何かを言いかけて口をつぐむと、その足で国王の前まで行き、深々と頭を垂れて跪いた。



「恐れながら申し上げます、王よ。王女殿下の護衛の件ですが……不肖このガンマ、辞退させて戴きます」


「……では、アンの護衛はどうするというのだ」


「はい。その代わり、我が娘である騎士ヴィクトーリアを推薦させて戴きたく存じます」


「だ、団長……!」



 ヴィクトーリアは急いで立ち上がると、顔がぐちゃぐちゃのまま、小走りでガンマの隣へ行き、同じように跪いた。



「……御覧の通り、まだまだ精神面では未熟なハナタレではありますが、すでに私めを凌ぐ技を持っております。必ずや王の御期待沿えるかと」


「よかろう。その進言、しかと聞き届けた。……改めてヴィクトーリアよ。今後とも、我が娘をよろしく頼む」



 国王はヴィクトーリアを見ながら力強く言った。



「お、おまかへくだひゃひ!」

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