第九話:告っていいよね?
やっぱり和虎が誤解したまま、喧嘩別れなんて嫌。元はと言えば陽と一緒に和虎の教室へ向かったのがダメだったんだ。
わたしひとりで行かなきゃ。行ってわたしから彼に伝えるんだ。私がどれだけ和のことが好きなのかを。わたしはお昼の時間を使って、あいつに会いに行くことにした。
「あの、和虎いますか? 朔夜が来たって伝えてもらっていいですか?」
知らないクラス、離れた教室に行くなんて今まで無かったし、して来なかった。お互いにどうすればいいのか分からなくて避けて来た。でも、もうそんなことじゃ駄目。とにかく彼に会わなきゃ。それなのに、和じゃなくて女子がひとり、わたしに話しかけて来た。
「ウチ、未亜って言います~。覚えてる? 虎くんといつも仲良くしてるんだけど……って、覚えてないよね。何しに来たの? 虎くんならどこかに行ったけど」
「覚えてます。和と一緒にいた女子たちの1人ですよね。彼に話があるから来たんです。ここで待ってていいですか?」
「んー。ここじゃ他クラスの子は目立つよ? って言うか、ウチもあなたに話あるんだ~。こっち来てくれる?」
「……いいけど」
彼女の後ろを付いて歩いていると、彼女は階段の踊り場で振り返り、わざとらしく笑ってみせた。
「あはっ、虎くんも可哀相だよね~? 幼馴染なんでしょ? それなのにまるで付き合ってるみたいにいつも一緒にいるじゃん。それなのに好きとか伝えてないなんてあり得なくない?」
「そんなのっ、あなたに関係ない」
「んーん、あるけど? ウチは虎くんのこと好きだし。告っていいよね? 彼女でもないんだしいいよね」
彼女じゃないけど、でも……嫌だ。ずっと一緒にいるのが当たり前だったから、だから言葉に出して言うのが恥ずかしくて、言ってなかったし言えなかっただけなのに。駄目……そんなの、嫌。
「だ、駄目だから」
「え~? 何で? いいじゃん、付き合ってないのに束縛とか可哀相だと思わないの?」
「……思わない。だってわたし――」
※ ※ ※
「お前、朔夜のことどう思ってんの?」
「呼び出して何かと思えば、それか。逆に聞くけど、君は彼女の事はどうなの? 付き合ってなくて、幼馴染だっけか? 付き合ってないのに何で一緒にいるか聞いていい?」
「悪ぃかよ。別に彼女じゃなくても一緒にいたりするし……」
「それな! 俺もキミと同じなんだけど? 彼女じゃないけど友達として好きだよ。和虎くんだっけか? 君が言わないなら、俺が先に告ろうかな?」
「ふざけんな! あいつは俺と一緒にいる方がいいんだよ。お前と無駄に話してもしょうがないし、朔夜の所に行く。じゃ、そういうことだから」
「まぁ、待てって! 君の気持ち聞いてないんだけど? はっきりと言ってくれないと、俺じゃなくても朔夜のこと好きな奴結構いるし、また同じことになると思うよ。俺だけじゃなくて、ここの中庭にいる奴等に分かるように叫ぶか何かしてくれないと、俺ら目立ってるし呼び出しくらうと思う」
「……っざけんな。朔夜探すし」
朔夜に直接言わなきゃ伝わんないし、コイツに言ったって意味なんて無い。それなのに、腕を掴まれてしかも、部活か何かしてる奴だからすごい力で動けないし、くそっ……朔夜に会いに行かないと駄目なのに。