第八話:すれ違いの中で
どうしてこんなことになったんだろう。和虎が好きなのに。好きだからこそ、彼の気持ちを探りたかっただけなのに。それにどう考えても、陽と一緒にいたことを気にしているし彼氏だと思われているなんて、そんなの嫌だよ。
「朔夜は俺と一緒にいるのがそんなに嫌なのか?」
「そんなこと一言も言ってないのに、どうして悲しくなること言うの……そんなにわたしのことが信じられないの? 部活仲間の男子と話をして、一緒に歩いてただけなのに。わたしは和のことを疑ったこと一度もないのにヒドイよ……和」
和は恋人でもないし、お互いの気持ちなんて知らないただの幼馴染。だけれど、今までずっと一緒にいて嫌いになったことなんてなかった。どうして今はこんなにもすれ違っているの? どうして……
「俺は朔夜……お前が、俺以外の男と楽しそうにしてる姿なんて見たくない。学校で会わなくしてたのも、絶対にそういう場面を見てしまう時があるって分かってた。だから俺はお前と外だけで会ってた。それなのに、何でだよ! 何で俺のこと、分かってくれないんだよ……ひでえのは朔夜じゃんか」
「わたしはただ、和のことをもっと知りたかったから、だから……だもん。ずっと一緒にいるのに、どうして分かってくれないの? 和はわたしのこと、どう思っているの……」
「俺はお前のことなんて――」
「――っ」
これ以上聞きたくない。分かってる。もう聞きたくないよ、和。
「ごめん、わたし一人で帰るから。じゃあね」
どうせ言葉の続きは、わたしが聞いても意味がない言葉だろうし、聞いたら間違いなく幼馴染として一緒にいた関係も終わってしまう。嫌……そんなのは嫌だよ、和。
わたしは和虎の言葉を最後まで聞くことなく、そこから逃げるように一人で家に帰った。悪いのはわたしなのかな? 彼が好きだから、だから気持ちを知りたかった。本当にそれだけのことなのに。
「……俺はお前のことなんて、嫌いになれるわけがないんだ。好きなのに、どうしてこんなにもすれ違うんだよ。どうすれば、朔夜といつも通りの関係に戻れるって言うんだ……朔夜、俺はお前が好きなんだ」
すれ違う俺と朔夜。俺は何としても、朔夜と一緒に居続けたい。だから俺は、朔夜と一緒にいた男を翌日呼び出して、関係を聞き出すことを決めた。
このままじゃ俺もあいつも悲しいままで、幼馴染の関係も終わって一緒にいられなくなる気がしてならない。そんなのは嫌だ、嫌なんだ。はっきりとさせて、それから俺はきちんと朔夜に伝えたい。好きだ、と。




