第五話:気付いた気持ち
俺は朔夜と会うのは基本的に外のみと決めている。いくら幼馴染で昔からずっと一緒にいるからと言っても、同じ学校で朔夜に会うってのはさすがに控えてる。それに、俺にも学校の友達付き合いはあるし女子たちとも話くらいはしてるからな。そういう所を見られるのは何だか誤解をまねきそうで嫌だった。
「虎くんって、まだ付き合ってないんだ?」
俺のことをそう呼ぶのは同じクラスの女子連中。俺がいつも一緒にいる朔夜のことは、誰もが知っていた。俺自身は誰にも相談もしてないし、好きだとかなんて一言も言ってないにも関わらず、女子たちはみんな当たり前のようにそんなことを聞いてくる。
「まだって、そんな……俺、そんなことみんなに言ってないよ? 朔夜のことだよね?」
「学校の中で会ってなくても、案外、外じゃバレバレだよ? 好きなんでしょ、彼女のこと」
「どうかな。ガキの頃から付き合いがあるだけで、あっちは単なる友達とか兄妹とかって思ってるかもだし、俺が好きとか言ったらきっとあいつは、変な顔しそう」
「そうかなぁ? 朔夜さんだっけ。彼女、いつも虎くんしか見てない気がするけど」
「それは見るよ。ふたりで歩いてるし、一緒にいる時に他の奴見るとかってあり得ないよ」
一体何を当たり前のことを言っているのだろうな。友達でも家族でも、自分とその人とだけ歩いて話してたら、自分を見ながら話すはずだ。
「それが分かってないようじゃ、虎くんはアレだね。極鈍ってことだよ」
「そんなこと言われてもなぁ。ここで会うにしても、廊下渡っていくとかそこまでしてって感じだし。学校の中でも俺だけを見るのかどうか試してみていい?」
「いいよ~! ウチらで虎くんの彼女にちょっかい出すからさ、それで反応みて見れば? そしたら案外上手く行くかもだし」
「マジで? じゃ、お願いするよ……って、あのさ……向こう側から朔夜が来るんだけど、どうすればいい? しかもどう見てもイケメン彼氏付きだよ。すごいショックだ……」
学校で会うことを避けて来た俺が、仲のいい女子たちの協力を得られて朔夜の俺への気持ちを探ろうとしたその時、渡り廊下を使って俺の方へ向かって来ていた。それもどう見ても仲良さげな男と。
「え、あー……カレシとは限らないでしょ。たぶん、部活の人じゃない? 見たことあるし」
女子たちはそう言ってるけど、俺はすでに泣きそうだった。俺だけじゃなかったんだ……っていうくらいに、他の男子と楽しそうに笑う朔夜を見るのがすごく辛い。それなのにこれから俺は朔夜の反応を見ようとしてるだなんて、何だか今すぐにでも逃げ出したかった。俺の気持ちを分かられる前に、帰りたい。
彼氏であってほしくない。朔夜、俺はお前と話したいし、遊びたいし、カレシとかじゃなくてもいいから他の男子と仲良さそうにして欲しくないんだ。だって、ガキの頃から俺はずっと――