第三話:コイツ、可愛すぎる
朔夜は俺がまだガキだった頃からの腐れ縁な関係だ。単に家が近すぎて馴染みってだけだが、まさか高校生になっても付き合いが継続するとは思ってなかった。
コイツの何がムカつくかと言うと、ちっとも俺の気持ちを分かってないことだ。小さい頃と今じゃ身長も声も性格だってお互いに違ってる。それなのに、未だに一緒にいて行動してる。彼氏でもないし、付き合ってるとかでもないのにだ。
それくらい分かれよっ! って、いつも思いながら朔夜といる。いま俺は、アニメに感化されて俺様系をわざと演じて朔夜に接している。どうやら嫌じゃないらしい。でも、俺は本当はこんな強いキャラじゃないんだ。俺は、朔夜だから演じられるだけであって、他の女子にはいたって普通の奴として相手してる。
「なあ、朔夜ってモテんの?」
「なっ!? 失礼なこと聞いてるって自覚してんの? 和虎のくせに」
「……んだよ! かる~く聞いてるだけじゃんかよ。お前、言っとくが可愛い部類なんだからな? だから聞いてやってんだよ。俺のくせにとか言うなよ、朔夜のくせに……」
深く考えずに言っただけなのに、俺の言葉に反応して無口になったと思ったら、もの凄く顔が真っ赤になっている朔夜。もしかして、可愛い部類って言葉が引っかかったか?
「何……、まさか照れてんの? マジか!?」
「わ、悪い? あんたの口からそれ言われるとか、想像してなかった。普段そうゆうこと言わないくせに、意表ついて来るとか生意気すぎるんですけど! 和虎のくせに」
「……ったく!」
何だコイツ、可愛すぎるだろソレ――
「お前はそのままで十分すぎんのに、惑わせるとかマジでやめろって」
「うるさい! バ和虎。こっちのことちっとも分かってなくて勘違いさせること言うな! あ~もう!」
それはこっちのセリフだよ。俺の気持ちなんて知らねえだろ。朔夜、彼氏いるのかな。いたら嫌だな……