此処は
目の前に広がる電子空間。流れてくるノーツを弾く。音楽なんて意識しない程懸命に弾く。平日の午前中は人が少ないからいつまでも自分の番。学生服で来たのは間違いかなと考えたが朝私服で家を出るのは不可能だったのでそれもまぁ良いかと自己完結に終わった。
僕は初めて学校をさぼった。ゲームセンターに居た。楽しいのは確かだが心の奥に残る濁り。携帯はさっきから鳴っていたがしつこかったので電源を切った。モバイルバッテリーを忘れたので充電を減らしたくないのも考えていた。
サボった理由は宿題だけだった。怒られるのが怖かった。そんな勢いでいつも降りる駅をすぎて通いのゲームセンターに来てしまった。今からゲームセンターの外に出たら間違いなく警察に補導される。
まだ九時か。
ゲームセンターに来て三十分しか経っていないが心は満たされていた。普段から三十分くらいしかいないのでこれ以上やることが無かった。仕方がないのでいつもはやらないゲームに手を出して、時間を持て余す。
幸いにも昨日はバイトの給料日なので財布は豊かだ。
それでも時間は過ぎるのが遅い。
順番待ちなんてないから片っ端から試す。楽しくない。楽しい。楽しくない。楽しくない。楽しくない。
人生はあまり楽しくない。
ゲームセンターに来てそんなことを思う。
片っ端からプレイして八割がつまらなかった。お金の無駄にしかなってないが今の自分にはそんなことより時間が経てばいいと思っていた。
もう、学校に行って寝るか。
諦めが付いて学校まで行こうと決める。
三階建てのゲームセンターの三階に居る。
一階降りる。
また降りる。
出口が見える。
外に出る。
最悪だ。これはタイミングの神様が悪意を持ったとしか考えれない。もしくは罰が当たったのかもしれない。
目の前には警察官。
目が合った。
こっちに来た。
そのまま補導でもされて学校へ強制連行されれば良かった。
僕は走っていた。
逃げ場なんて無い。捕まりたくない。そんな子供な考えで逃げた。中学までやっていた部活は高校に上がってから入らず帰宅部になった自分の体力は知れていた。
路地裏へ抜ける。道となる道を通る。ここは何処だ。大通りが見える。出ればわかるだろう。
出た先は見たことが無かった。見た事のない街。発展していて、マンションやビルが建ち並んでいた。
看板には『○○町』。自分の降りた駅付近の町だった。わからない。何が起こったのかわからない。
待てよ。警察官はどこへ行った。
道を戻る。路地裏を戻る。ゲームセンターだった場所へ。
そこは皆が見た事あるのであろう。いや、ここがどこかわからない時点では何も言えない。
「公衆便所・・・」
ゲームセンターなんて無かった。
これはこれで面白くない。厄介事であった。
迷子か。間違える事なんてあるのか。謎は深まるばかりだった。
だが助かったわけでもなく、今度は違う警察官に見つかる。
ここは大人しく捕まって学校へ行こう。もう諦めよう。
「何してるのかな。お兄ちゃん学校はどうした」
ビール腹で小太りな警察官の尋ねるに仕事が増えるのが嫌そうな顔
「遅刻なんですけど降りる駅を間違えてしまって、△△高校ってどこか教えて貰っていいですか」
警察官の顔がグネる。何を言ってるんだと言わんばかりに。
「と、とりあえず交番まで行こう。調べてあげるよ」
「ありがとうございます」
小さく礼をして付いていく。本当にわからない。なんだ此処は。
交番に着いた時に僕は目を疑った。そして携帯を確認しようとした。電源を落としていたため起動に時間がかかる。
待ちきれないと思わせるように警察官が事実を告げる。
「○○高校はねぇ・・・十四年前に廃校になっているんだけど・・・君は何をしていたんだ?」