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美女は野獣  作者: スットン
第一章 桟葉拿樹海編
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十話 食べて食べられて



 なんだろうあれは――鰐??



 首の長い巨大な鰐のような生き物がちびトル達をバリバリ食べている……



 まじか。


 一瞬かなりびっくりしたけど、確かに水辺なんて恰好の餌場だよな……あまりにいろいろありすぎて考えが及ばなかったけど肉食生物の一匹や二匹はそりゃあいるんだろう。


 うわあチビトル達の様子を樹の上から見ていてよかった。一歩間違えば私があの口の中にいることになっていたのかもしれないと思うと……うわあ……


 首長鰐は口の中のちびトルを飲み込んだあと、頭の上のほうだけ水面に出し、辺りの様子を伺って、やがてとぽんと水の中に入っていった。




 あそこに行くの私?? ものすごく行きたくない。でものどはからからだ。

 ちょ、ちょっとまって。

 作戦を考えよう。急いてはことを仕損じるだ。


 まずやばそうな奴が首長鰐だけとは限らないのが怖いんだよなあ。ともかく間違っても水の中にだけは入らないようにしよう……


 作戦1、ダッシュで行って水のんでささっと帰ってくる。

 作戦2、チビトルみたいなのがくるのを待って、奴がそれに気を取られてる間にこっそり飲む。通称囮作戦。

 でもこれは時間がかかるし、そもそも奴が囮に気をとられるかどうかがわからないからあんまり有効的じゃないなあ。


 やっぱりかなり単純だけど作戦1がいいかな。


 よし、めちゃくちゃ怖いけど、腹をくくろう。なにかあったらダッシュで樹の上に戻る。


 まず樹の上から水面を確認。見た感じは何もいない。気配も感じない。

 それから後ろも確認。水飲んでたら後ろからガブっととかしゃれにならない。よしいないね。



 こそこそと音を立てないように、かつ、できる限り迅速に水面に近づいていく。



 到着! 水! ごくごくごくごくごく。



 あ、おいしい……。

 正直井戸水以外を飲むのって抵抗がないわけでもなかったんだけど、やっぱりものすごく喉が渇いてたからかな。思えばご飯だけじゃなくて水分も昨日の昼からとってなかったんだ。

 ううう……おいしいよう、水サイコー!!



 夢中になって水を掬って飲んでいたその時、ふと顔をあげると目が合った。

 体が硬直する。


 水面から黒い顔が半分だけ出ている。



 …………だ、大丈夫。

 さっきみたいにグワーッと来たらジャンプで避けれる。今の身体能力ならいけるはず……


 心臓がばくばくと音を立て、緊張で上手く自分の体を操作できないような感覚に見舞われた。

 それでも、目を離さずに、足を動かすことに集中しながらじりじりと水面から離れる。




 十分に時間をかけて5mほど離れたあたりで、水面の顔は諦めたのか興味を失ったのかポチャッと音をたてて水の中に消えていった。


 ダッシュ!!!


 樹に登る!!!


 はあ~~~。樹の上大好き。安心安全のマイベストプレイス。

 いやホントさっきは心臓が止まるかと思った。食われる前に心臓が止まるってのも本末転倒なきがするけど

 さっきはそれくらいびっくりしたし恐ろしかった。目が合うって……


 ともかく水分は補給できた。一時的なものだからまたのどが渇いたときにどうするか考えなきゃなあ

 毎回毎回危険と隣りあわせで水飲むの嫌だよ私。


 ぐごごごごご、とおなかが鳴った。


 あんまり意識しないようにしてたけどもう無理だあ。飲欲が収まった途端空腹が主張してくる。

 なにか食べなきゃ……


 本当は魚でも捕ろうかと思ってたんだけど道具もないし、水の中にはいって捕まえるのは絶対嫌だし……

 無難に木の実探してみるか。それがダメだったら生き物を狩るしかない。

 あ、一応また戻ってこれるように目印つけておこう。木の実や小動物を探しながら100m毎に鉤爪で樹の幹に矢印を彫っていく。


 

 …………


 …………全然見つからない。妖魔にすら合わない。

 ないわけないと思ったんだけどなあ、見通しが甘かったか。いや、立て続けに妖魔に遭遇したんだから生き物がいないはずはないよな……

 ああ……日が暮れていく……



 そうして私は、食べられそうな物は見つけられないまま更に丸一日間森の中を彷徨った。


 

 いかん、空腹が限界に近い。最悪このまま一週間何も見つからない場合、飢え死にすら視野に入るかもしれない。前世を含め食には恵まれていたから自分がいつか飢え死にをするかもしれないなんてこれっぽっちも考えていなかった。

 喉が渇いたりお腹がすき過ぎて身体に力がはいらない、頭もなんだかふわふわしてあまり回っていない感覚がある。これ以上はエネルギー消費を節約するためにあまり動かない方がいいかもしれない……い、今妖魔に襲われたら私は……



 急に恐ろしくなって辺りを見回したとき。

 1km先に白い1m大ほどの蛙が跳んでいるのが目に入った。

 

 あれは……妖魔――だろうか。


 あんな大きさの白い蛙なんて普通いないだろうし妖魔だと思っていいのだろうか。みたところ、危険そうな感じはしない。妖魔……妖魔って食べられるのか? 

 最悪虫を食べるのもやぶさかではないと思い始めてたから妖魔、もとい蛙のほうがまだいける。かもしれない。


 うん、大丈夫、仏蘭西人や中国人だって蛙食べるって言うしいける筈……。


 覚悟を決めた私は音を立てないように慎重にしかしできるだけすばやく蛙の後を追けた。




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