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美女は野獣  作者: スットン
第一章 桟葉拿樹海編
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九話 チビトル追跡



 昨日はまったく気が休まらなかった。あの謎の靄が引いた後、私は一目散に樹の上に登ったのだが、ためしに横になってみても、恐ろしくて目を閉じることができなかった。



 得体の知れない恐怖と空腹で神経は張り、身体に力が入らない。

 ついでに寝る場所にえらんだところもごつごつしていて全然居心地がよくなかった。



 日が昇ってすぐ、私は慎重に樹を降りていった。


 おなかがすいた……

 思えば昨日のお昼から何も食べてない……

 水分もとっていないため、のどもかなり渇いている。



 ここにずっといるわけにはいかない。もしかしたら今夜もまたあの恐ろしい靄がでてくるかもしれない。移動しなければ……とにかく、まずは水辺を探そう。魚もいるだろうし。


 うーんといっても適当に探してたら無駄に体力消費するだけになっちゃうだろうしどうしようかな……生き物の後を追ってみるか?

 なにかいないかな……できれば妖魔じゃなくて、もうひとついえば追うのが大変じゃない穏やかなタイプの草食系生物はいないだろうか


 歩きながら慎重にあたりを探る。最初に来たときに薄暗く感じた森の中は、夜中の森と比べると大分明るく感じられ、薄気味悪さも比例して緩和されてきた。


 それにしてもここらへんなんでこんなに苔むしているんだろう、水辺が近いのだろうか。でも樹の途中まで苔びっしりってなんか変な感じだよなあ

 こういう森ってそこら辺にちょろちょろって小さい川みたいのが流れてそうなんだけども、いまのとこ見当たらない


 ん?

 なんか視線を感じる……神経が過敏になっているせいだろうか……

 いや、猿になってから大分感覚が鋭くなった気がする。気配というものがなんとなく体感できるようになっている。


 きょろきょろと辺りを見回してみる


 何もいない……?




 いやいる。

 なにかがあとをつけてきてる。

 なんだ。

 昨日のような圧倒的な恐ろしさは感じない。だけど捕食されていた妖魔がどうしても脳裏にちらつく……もしかして、黄舌だろうか。だったら逃げないと、あれも人を喰う恐ろしい妖魔だ。


 私は身体を前のめりに倒して思いっきり走った。


 途端、後ろから、がさっがさっという音がする。

 一匹じゃないのか!?


 走りながらチラッと後ろを振り返ると小さい恐竜のようなものが数匹追いかけてきていた。


 黄舌じゃない……? あれも恐らく妖魔なのだろうか。黄舌や昨日の靄ほど恐ろしさは感じないんだけども……だけどなんか昔映画で見たヴェキラプトルってのに似ているな、あの映画幼女が食べられちゃってたんだよね……うわあ、絶対に捕まらないようにしないと


 幸い私のほうがスピードが速かったのでぐんぐん引き離していく。

 大分引き離したところで私は樹に登った。


 20mくらいの高さから下の様子を伺う。


 少しするとさっきのちびラプトル達が現れた。


 しばらく辺りの匂いを嗅いでいたが、やがてあきらめたのか別の獲物を探しに行ってしまった。



 ……どうしよう追いかけてみようか。

 でも下に降りたらバレちゃいそうだよな……樹から樹へ飛んでみるか?


 うおおできるかな、今の私なら猿っぽいことは大概できるとおもうんだが……ちょっと、いやかなり怖いけど……そうこう考えているうちにチビトル達はどんどん先へ進んでいる、見失う前に行動しないと次のチャンスがいつくるかもわからない



 えーーい、いったれーーー! ぴょーーーーんと!!! ひいーーー!



 ……できた!! 飛べた!! 飛べたよ私!!!


 いけない、感動してる場合じゃない。

 チビトル達を見失わないようにしないと。


 追跡相手からほどよく距離を保ちながら樹から樹へ飛び移る。

 ちょっと飛び移るのにも慣れてきたぞ。なんだか忍者っぽくて少し楽しい。それに地面に降りなくても移動できる手段ができたのはありがたいな。危険が大分減るはず。


 それにしても恐竜っぽい生き物が多いな、黄舌も顔は猿だけど身体つきは恐竜のようだ。

 この世界の恐竜は隕石で滅びなかったのかもな、まあ道術がある時点で元の世界を基準に考えててもしかたないか……って、おおっ! 湖だ!!

 ちびトルグッジョブ!!!



 ――太陽が真上から湖を照らしている。今は調度お昼時くらいだろうか。


 チビトル達は獲物を追うことを諦めたのか水分補給をしたり水浴びをしたりしている。


 あはは、こうやってみてると結構かわいいんだけどな。

 とりあえずあのチビトル達が去ったら私も水を飲もう。もうからからだよ。空腹だって限界が近い。どうにかして食料の都合もつけないとな、だんだんちびトル達が餌に見えてきた……


 そう思ったときだった。


 水面がいきなり盛り上がったかと思うと、水しぶきとともに巨大な口が現れてものすごい勢いでチビトル達の群れに突っ込んできたのだ。


 チビトルたちは声を上げる隙もなく巨大な口の中へと消えていった。




 ……え??


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