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エデンの園のユグドラシル  作者: 秋陽尊午
受胎
8/14

修学旅行~崩壊~

11:

どれくらいの時間その中にいただろうか。

気がつくと空を見上げていた目は羽根をとらえてなかった。

「降り止んだのか…」

携帯を見る。

四時十数分前くらいだ。


もう、戻るか。


と、思った時、音が耳に飛び込んで来た。

「なんだ?」


ホテルの外から聞こえる。

謝池はホテルの敷地から出て、目の前を通っている国道まで足を進めた。




真っ暗だ。




なのに、音は聞こえる。

良く聞くと、太鼓や小鐘、男や女の歌う声が聞こえる。


真っ暗な通りの奥のほうにぼんやり光りながら、何か大量の人のようなものがこちらに近づいてくる。

「なんだあれ…」

と、思った同時に、腕を引っ張られた。



「なんだ!? えっ!? 田邉か!?」

「しっ!」

田邉が言葉を遮った。


「今から言う事を続けて言え、死にたくなきゃな」

田邉は小声で、しかし真剣な言葉で伝えてきた。

謝池は返事の替わりにうなずいた。


田邉が声をあげる。


「カタシハヤ」

謝池も続ける

「かたしはや」

「エカセニクリニ」

「えかせにくりに」

「タメルサケ」

「ためるさけ」

「テエヒアシエヒ」

「てえひあしえひ」

「ワレシコニケリ」

「われしこにけり」


何も起こらなかった。

気づけば、さきほど奥に居た団体行列が目の前にせまっていた。



「人じゃない!?」

思った瞬間、目を疑った。



そこには、いわゆる妖怪、といわれる類のもの達がわらわらいたのだ。


謝池は体が固まって動かなかった。

田邉は何か、お経のようなものを唱えている。



ギロリ



妖怪の一人が目を向けてきた。


「やばい…!!」

しかし、妖怪はすぐそっぽを向き、行列騒ぎに加わっていった。


謝池は瞬きも忘れるほど固まり、そこに立ちっぱなしなっていた。




どのくらい時間が経ったか、気付けばそこには、田邉と謝池の二人だけになっていた。



真っ暗な世界ではなく、通りを挟んだコンビニの照明、電信柱の街灯が夜中の国道を照らしていた。



気付けば、汗だらけになっていた。


「なんで、外に出た!? あれほど言っておいただろうが!」

田邉が少し抑えた声で怒っている。

「すまん、羽根が降っていたんだ。それを見たくて…」

謝池が居心地悪そうに応えた。


「さっきの」

と、田邉。

「ん?」

「さっきのは百鬼夜行だ」

「ひゃっきやこう?」

「聞いた事くらいあるだろ。この世の者ではないもの達の大行進だよ。それで、俺達が唱えたのは奴らから目をあざむくための言葉だ」

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