修学旅行~聖夜~
10:
目が覚めた。
携帯を見た。
夜中の三時過ぎたくらいだ。
謝池は窓側の椅子に座り、窓の下を眺めた。
母からメールは返ってきていない。
その事がひっかかりながらも、靖子へのケジメと田邉の行動が気になっていた。
窓の外がぼんやり光った。
一つ、また一つと、ひらひらと何かが舞い降りてくる。
「雪か?」
そんなわけない、今は6月だ。それも京都。
部屋の中はむしろ冷房を入れても良いくらいの温度だ。
光るものは、気づけば、雪のように降ってきていた。
その一つを凝視した。
羽根だ。
「天使の羽根事件」
いつか見たニュースが頭をよぎる。
気がつけば、それは雪のごとく大量に降ってきている。
田邉を起こそうと思った。
瞬時に頭をよぎって部屋の布団を見ると、田邉がいない。
「どこだ?」
謝池は同じ部屋の男子の布団を避けつつ、部屋の外に出て、エレベーターに向かった。
エレベーターは4階と8階に止まっていた。
謝池はエレベーターを呼ぼうと、ボタンを押した。
ボタンを押しても反応が無い。
「なんだ?壊れているのか?」
それにしても、おかしい。
謝池は思った。
通常エレベーターは誰も使わなかったら1階に止まっているものだ。
ここは男子が泊まっている3階。
4階は女子が泊まっている階だ。
8階は最上階になる。
謝池は階段から1階へと駆け降りた。
羽根をもっとよく見たいと思ったからだ。
ロビーにつくと、そこに人の気配はなかった。
受付にも人はいない。
そのまま外に出た。
羽根が光りながら、雪のように降っている。
手のひらに乗せると、ポウッと光って消えた。
謝池はおもむろに携帯を取り出し、『サエズリズム』を見た。サエズリズムは文字数108文字制限のSNSである。
そこには、東京でテレビが見れなくなったことが溢れていたが、多少、中くらいの規模で、羽根のについての記述があった。
「今降ってる!at kyoto」
「こっちじゃ降ってないよ、栃木」
「すげえ!雪みたいだ 五山の送り火地方」
どうやら、京都の一部で、降っているようだった。
その中に、気になる一文があった。
「え?そっち降ってるの?昨日はこっちで降ってたよ 東京」
昨日は東京でも降ってたのか。
謝池は、その一文を読んだ後、空を見上げ、あまりの神々しい情景に思考を停止し、
しばらく、その神秘な雪の中に身を置いていた。