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エデンの園のユグドラシル  作者: 秋陽尊午
受胎
4/14

修学旅行~遡源~

6:

本殿に入って寺院の匂いにふと、思い出された。

かすかな記憶の中の寺院が合致する、デジャヴのような感覚を覚えた。

柱の中の一つに、なにか刻まれていた。

それは、小さい時の背比べのように無造作に刻まれていた。

「記号?」

そう思わせる記号のような文字が数文字、刻まれていた。



「道武くん、お母さんは元気かね?」

と、大柄な男性が座りながら訊ねて来た。

「はあ、おかげさまで…」

「晃聖様、私達、貴方の事も、ここでの事も、憶えていないんです。」

と、靖子が間に入る。

「ああ無理もない、あんな小さかったんだからな。

それと、私に『様』はいらないよ。君らの大伯父なんだ、気軽に『晃聖伯父さん』とでも呼んでくれ」

と、無骨に微笑みながら言った。



ものの30分の談話だったが、謝池にとっては衝撃的な内容だった。



晃聖は、和智三兄弟の長男。

謝池の祖父は次男、名を『正利まさとし

靖子の祖父は三男、名を『正隆まさたか


もともと、京都の生まれ、京都で育ち、それぞれが別の寺で修行をし、宗門を修めた。



しかし、正利、正隆が、たまたま京都を訪れた姉妹と近しい関係となり、昔の時代の厳格な仏門の掟の為、破門となり、姉妹の故郷である横浜に身を寄せ、そこに移り住み、生活を営んだ。


正利、正隆は、それでも仏門を離れられず、所帯を持っていても修行ができる仏門に納まり、それぞれ、修行に励んだ。


正利は、ある程度、そこの寺で修行を積むと、謝池の母が幼い頃に横浜を単身離れ、別の場所での修行に励んだ。


正隆は、靖子の父親とその妹の誕生を見守った後、行方不明になっている。


謝池も靖子も、それぞれの祖父は、幼い頃に亡くなったと聞かされていた。

そして、あまり会っていない祖母達が、姉妹という事実も初めて知った。



つまりは、謝池と靖子が遠い親戚という事が発覚した。



もともと、謝池の母の旧姓は靖子の名字と一致していたが、そんなに意識していなかった。

今思えば、偶然ではなかった事だ。



「道武くんのお祖父さんも、靖子ちゃんのお祖父さんも、もう亡くなったと聞かされているかもしれないが、これだけは言える。君らのお祖父さんは、いつも、君らの事を見守っているよ。だから、苦しい事や辛いことがあっても、その事を思い出して、勇気と力に変えなさい」

晃聖は、話しの途中、説得するように言った事が印象的だった。



その他にも、仏教の話も、少し、聞かされた。



金閣寺での行動時間の終わりも近付いた。

頃合いの良い頃に、謝池達は晃聖にお礼を言い、本殿を後にした。




「なんで、私達の事、いままで聞かされてなかったんだろう…」

靖子が、軽くショックを受けたような表情で呟いた。

「まあ、晃聖伯父さんも言っていたが、ああいう職についている以上、秘密にしなきゃいけない事も多いんだろう。元々、仏門ってのは、結婚するのも、肉や魚を食べるのも本来は禁忌な訳だし…」

謝池が、落ち着きを取り戻すように行った。


「ねえ!みっちゃん! 結婚って、従兄妹でも出来るんだよね!?

それよりもっと離れてれば、血が繋がってても出来るんだよねぇ!?」

靖子が今にも泣きそうな表情で迫って来た。


謝池は軽く驚きながら、

「落ちつけよ。従兄妹は四親等だから結婚出来るよ、お前、何言ってんだ…?」


「しっ!」

靖子が謝池の口に人差し指を立てた。


「それ以上言わないで!」

靖子が厳しい表情で力強く言う。


「わかった…」

謝池は半ば、腑に落ちないながらも言葉を止めた。



「まあ、でも、珍しいお菓子いっぱい貰えたね!お抹茶まで貰えたし、これ、高いやつだよきっと!」

靖子の表情が一変、明るくなる。現金な奴だ。


「後、なんだろ、これ、お守りかな?」

靖子と謝池がそれぞれ貰ったモノは、杖の先に輪っかが何個かぶら下がってる。

ミニチュアの様で、手の平に乗るくらいの大きさだ。

「錫杖だろ?ほら、山伏とかが持ってるやつ」

「ああ、テレビで見たことある!晃聖伯父さんから貰うと効力ありそうだね!」

「ああ…」


振ると、リンリンリン、と、心地いい音を響かせる。


「これも貰えたしねー。へへー、これで、みっちゃんとお揃いだね!」



靖子の右腕に、金紐で結った、数珠が輝いていた。



黒曜石が、丁度、ダビデの星の頂点のように、六点に配置され、その他を水晶が囲んでいる。

謝池の数珠と同じように、六点の黒曜石の一つには、何か記号のような文字が刻まれていた。


「黒と透明、それと金の紐がアクセントになって、大人っぽく見えるよねー」

靖子がはしゃいだ。



靖子と会話をしながら、謝池は晃聖の言葉を思い出していた。


「道武くんのおじいさんは宗教に造詣が深い人でね、臨済宗の生まれにも関わらず、高野山へこもって真言宗の修行もしていたんだよ」

晃聖は複雑そうな顔で話ていた。



そして、謝池の心に引っかかっていた晃聖の言葉、

「その昔、『邪淫法師じゃいんほうし』という、それはもう悪鬼や羅刹の如く悪行を積み重ねた法師がいてね。その者が、世界中に『禁樹きんじゅ』を残したんだよ。

禁樹が育てば、淫らな花を咲かせ、邪な実を結ぶ。それは、人々を惑わし、悪の道へ誘う悪の元凶だ。

今でも、この禁樹を探して封印する業に携わって、世界中を飛び回っている人達がいるんだよ…」


丁度、靖子がトイレに行っている時、謝池一人が聞いた、囁くように言われた言葉だ。


「禁樹…」

その言葉を、心の中で呟いた。



それと、困った時に唱える言葉、というものも教わった。


なんだっけ?


そう、


「オン・サン・ザン・サク・ソワカ」


「ん?なに?」

知らずに呟いていた言葉に、靖子が反応した。


心なしか錫杖が鳴った気がした。


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