修学旅行~序章~
0:
それはそこにあった。
本来あるべき場所に無く、違うそこに居たのだ。
「なんなんだよこれ…」
そう呟くのが精一杯だった。
『それ』はいかにも人間らしく、二本足で立っていた…
1:
「尚、オリオン座流星群はじょじょに地球に近づいており、NASAの発表によると冥王星付近まで接近しており…」
時は遡って数週間前、
朝のニュースがテレビから流れている。
「道武、早く食べないと遅刻するわよ」
「わかってるよ」
母の急かす言葉に合わせ朝食を早めに終えると、登校の途に着いた。
今年の梅雨は空梅雨。梅雨の季節だというのに、ここ一週間、やけに天気が良く過ごしやすい天気だ。
「修学旅行まで持ってくれればな…」
そんなことをふと思いながら学校への道を歩く。
「おい!謝池!おっす」
後ろからふと声をかけられる。
クラスメイトの田邉だ。
「おお、おはよう」
少々普通のテンションで挨拶を返す。
「お前、修学旅行で廻る場所決めたか?俺、平安神宮行ってみたいんだよな」
と、田邉。
「俺はまだ決めてない。っつーか一緒の班だから今週中にもミーティング入るっしょ、そん時決めるよ」
謝池が返す。
「やっぱ嵐山と京都タワーは外せないよな。しかし、高校にもなって修学旅行が京都って、ウチの学校、どんだけ予算がないんだよ…」
田邉が不満そうに口をとがらす。
「まあ、いいじゃねーか。どこぞの外国行った学校なんて集団食中毒起こした、って聞いたし。」
「みっちゃん、おはよう!」
明るくまろやかな声が空に飛ぶ。
幼馴染の靖子だ。
「おす。」
と、軽く返事。
「みっちゃん、修学旅行で廻るとこ決めた?ウチの班では清水寺行く事になってるの!」
と、靖子がコロコロと言う。
「もう、そこまで話が進んでるのか、ウチの班も早く決めないとな」
と、田邉が口を挟む。
と、そこへ、無精髭を生やし、疲れたスウェット姿の男がフラッと横切った。
「伸兄ィ!」
と、謝池が声をかける
「おお、ミチ。それにやっちゃんと…、田邉くんだっけ?」
近所の幼馴染で年上の最上伸彦、大学生だ。
「あ、おはようございまっす」
田邉が分が悪そうに挨拶する。
「伸兄ィにしては、珍しいね、こんな朝早くに通学なんて。でも、今から大学行く格好には見えないね!」
靖子がからかうように、いたずらに微笑んだ。
「オンラインゲームでオール明けでコンビニに朝飯買いに行くんだよ。大学は、今日も自主休講。
じゃあな」
フラフラと伸彦が姿を消した。
「あんなので、卒業できるのかな? ねぇ、みっちゃん!」
と、靖子。
「まあ、昔から頭切れる伸兄ィだ、学校でもうまくやってるだろ」
謝池が納得したように頷きながら、
「どこまわろっかな…」
そんな事を思いつつ、顔馴染みの二人に挟まれながら、学校への道を歩いた。
2:
「じゃあ、各々、班の中で話し合いをして、周る場所を提出するように」
担任の長山が声をあげた。
クラス中、班に分かれて話し合いを開始した。
「さあ、やるか」
田邉が音頭を取る
「どこ、廻る?」
「嵐山は定番っしょ」
「平等院も捨てがたいよね」
「でも、あそこ、京都の外れだから移動時間に時間取られるんじゃない?」
D班男女混合7名、各々に声を上げる。
「謝池はどこ行きたいのよ?」
と、田邉が声を上げ、視線が謝池に集まる。
「俺は………、金閣寺かな?」
と、心ここにあらずで応える。
「やっぱなー!」
「金閣、清水寺は外せないよなー」
「でも移動距離的に清水寺から金閣寺は結構距離あるぜ?」
「間に平安神宮挟めば見るとこ増えるじゃん」
「後、下鴨神社も!」
各々の声が上がる。
謝池はこの修学旅行にあまり乗り気になれなかった。と、言うのも、幼馴染の靖子と同じ班にならなかったからだ。
靖子と出会って17年。来年には大学受験も本格的に始まる。忙しくなる前に、二人の関係にきっちりとケジメをつけておきたいと思っていた。修学旅行はいい機会だったが、二人きりになれる時間が取れるかどうか…という事ばかりに頭が回っていた。
「謝池くん、話し聞いてた?」
同じ班の睦美が口を挟む。
「ん?ごめん、聞いてなかった」
「田邉君の案で、金閣寺からスタートして、嵐山、そこから飛んで、平安神宮、八坂神社、清水寺っていうコースで決まりそうなんだけどな」
清水寺か…確か靖子の班も清水寺に行くと言っていた。うまくすれば会えるかもしれない。
「ああ、いいと思う」
謝池の一言により、D班のコースは決定した。
と、共に、別班で話し合いをしていた靖子の視線も謝池に注がれていた。