オルト解放隊
「取り戻すねぇ……。 まずそのオルト王国はなんで滅んだんだ?」
ゲバラがイリーナへ質問する。
「俺達は別の世界からきた人間だ。 まあこちらの事情は置いとくとして、俺達はこの世界の歴史をしらねぇ。 それどころかここが何処だかも分かってないんだ。」
「ああ、ごめんなさい。まずそこから説明いないとね」
イリーナは謝り、説明を始める。
「まずここはガリア地方。 この大陸、キルメア大陸の北に位置する元オルト王国領よ。 この大陸には3つの大国があって、今はその3か国で戦争が起きてるの。もうかれこれ5年間ぐらい戦争してるわ」
「ほう、と言うことはオルトはその3か国のどれかに攻撃されたんだな」
ゲバラの言葉にイリーナは少し驚く。
「ええ、そうよ。 よく分かったわね」
「馬鹿にしてんのか?これくらい誰でも分かるわ」
彼が言うと残りの2人も同意するように頷く。
「まあそれなら話が早いわ。 私達の国はその大国の1つ、ギスカ帝国に攻撃されたの。 ちょっと待ってね」
そう言って彼女は地面に地図を描く。
「大陸の北西にあるのがギスカ帝国、北東にあるのがフェリス公国。 最後に南に広がるのがエリシア連邦よ。 オルト王国はギスカ帝国とフェリス公国の間に位置していたわ。 オルトが滅ぼされたのは約2年ほど前よ」
「よくもまあその立地で国が存続できてたのう」
ホーは半分呆れていれようだ。
「それはオルト王家に代々伝わる氷の魔法のお陰よ」
「魔法、と言うと嬢ちゃんが追われてるときに使ってたあれか?」
ゲバラが思い出したように話す。
「ええ、あの氷魔法を使えるのはオルト家の者だけ。 私はまだ未熟だけどお父様の魔法の腕前は素晴らしかったの。 1人で数百人の兵士と戦えたわ。そんなお父様がいたからオルト王国はどこからも攻撃されなかったのよ。 だけど、」
イリーナの顔が暗くなる。
「そんなお父様が2年前に亡くなってしまったの。国中が悲しんだわ。 そんなときに……」
「ギスカに攻撃されたと」
「その通りよ」
「それでオルト王国が滅ぼされた後、イリーナ嬢はどうしていたのだ?」
今度はチトーが質問する。
「最初はギスカ帝国を逃げまわっていたんだけど、しばらくして捕まってしまって。 それからはこの森を抜けた先にある収容所に閉じ込められたわ。 それからは一年くらい囚われてたけど今日の朝同じ収容所に囚われた仲間と一緒に脱走したの」
「その仲間はどうしたのだ?」
「脱走してすぐ兵士に見つかってしまって、私を逃がすためと言って囮になったわ。 もう捕まってるみたい。」
イリーナは一旦言葉を切る。
「私はこの仲間と、そして収容所に囚われている全てのオルト国民を助けたい。でも私だけじゃ間違いなく出来ない。 だからチェ・ゲバラさん、ホー・チ・ミンさん、チトーさん。 私に力を貸して!」
革命家達はその言葉を聞き、笑った。
「ははっ、いいじゃないか! その大きな理想、大好きだ!」
ゲバラは笑いながら、言い放つ。
「じゃあ……!」
「もちろんいくらでも手伝ってやる。嬢ちゃんの理想が叶えるためにな!」
「本当に? ありがとう!」
イリーナは喜び、そして泣き出した。
「おいおい、泣かなくてもいいだろ」
ゲバラはイリーナが泣き出したことに慌てている。
そんな2人の姿をホーとチトーが微笑みながら見ていた。
「ほっほっほっ。王女とは言うもののまだ子どもじゃからのう。」
「私達がちゃんと手助けをしてやらねばな」
「そうじゃのう。それにしても前世でも今世でも戦いとは。少しは休みたいものじゃ」
「仕方ないだろう。それが私達の宿命だからな」
2人は前世での戦いの日々を思い出す。
再びあの日々をおくるとなると少々気が滅入ると共に、目の前の少女を助けるためならどんなことでもしようと心に決める2人。
「歳はとっているが身体は衰えていない。イリーナ嬢のために2回目の人生捧げるとしよう」
「じゃな。」
そしてやっとイリーナを落ち着かせたゲバラが立ち上がり声高々に言った。
「よし、それじゃあここに『オルト解放隊』の設立を宣言する! 最初の目標は森の外の収容所。ここを占領し、オルト国民を解放する。決行は明日だ。いいな!」
「「「了解!」」」
こうして革命家達の戦いは幕を開けた。