"同志"
走り初めて15分ほど。
「ほら、見えたぞ。」
走るチェ・ゲバラがある所を指差す。
少女が彼の指差す方を見るとそこには小さな小屋があった。
「あれ?」
「ああ。 なんだ? もしかしてショボいって思ったのか?」
「ち、違うわよ!」
「はっはっは。 まあ確かに見た目はぼろっちいが隠れ場所には十分過ぎる位の良物件だ。 ほら、着いたぞ。」
チェ・ゲバラはゆっくりと少女を降ろす。
彼女は少しふらつきながら辺りを見渡す。
小屋は確かに小さく古ぼけているが、辺りの木々が風雨を防いでいるお陰か壊れた場所もほとんどなくまだ十分使えるだろう。
小屋のある場所も周りを木々に囲まれているため分かりにくく、なおかつ近くから滝の音が聞こえてくるため多少の音なら消してくれそうだ。
「な、最高の場所だろ。」
チェ・ゲバラは少女を見て言った。
少女は頷く。
そんな2人に向かって何処からか声がした。
「おや、ゲバラよ。 今日の獲物はその女の子かの?」
「ゲバラ殿。いくら食料が少ないからと言って人の道を外れるのはどうかと思うのだが。」
声のするほうを見れば、2人の来た方向の逆から2人の男性が歩いてきていた。
どちらの男性もチェ・ゲバラより歳をとっているようではあるが2人して大きな獣を担いでおり、とても元気そうだ。
そして手にはそれぞれ形は違えど、チェ・ゲバラの持っているような"筒"を持っていた。
「冗談は止めてくれよ。 俺は襲われてた嬢ちゃんを助けただけだ。 ほら、怖がってるだろ。」
「なに、ちょっとしたジョークじゃよ。 怖がらせたようならすまんのう。 どれ、お詫びの自己紹介でも。」
そう言って男性が前に出る。
「わしはホー・チ・ミンじゃ。 ホーおじさんと呼ばれとったぞい。」
続けてもう1人の男性も前に出る。
「私はチトー。 まあ本名ではないがな。」
そして最後にチェ・ゲバラが言う。
その言葉は少女には信じられないものだった。
「俺達3人はこの世界とは違う場所からきた異世界人であり・・・偉大なる愛と真実に導かれて進む革命家だ。」