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レジ袋戦争  作者: 泡沫夢、しゃーな
5/6

君と幸せになりたい。

あれから一週間、僕は家から出ることができなかった。街は「レジ袋強盗」の噂が広がっていて、とても外に顔を出せる状況ではなかった。


そんななか、ある噂が耳に入ってきた。それは、僕が奪ったレジ袋の代金を一人の女性が払ったと言うものだった。おそらく、その女性とは螢灯のことだろう。


しかし、なぜ彼女がそこまでしてくれたのか。僕にはわからなかった。


だって、カノジョじゃないのに。家族じゃないのに。幼馴染みでもない。友達と言えるかどうかすらわからない。


「なぜ。」


その言葉が頭の中をぐるぐると回り続け、その日は眠れなかった。



一ヶ月がたった頃には、噂はさっぱりきれいに消えていた。

久しぶりに家の外に出ると、太陽の光が眩しかった。


「散歩でも、してみようかな。」


ふと、そう思い、僕は目的地もなくぶらぶらと歩き始めた。


子供の頃、遊んだ公園。あの頃の僕らはどれだけ純粋だったのだろうか。今の僕は、大人の真っ黒な泥に沈んでいくようだ。


一度だけ、螢灯にこう言われたことがある。


「あなたは勇気があるのね。」


僕には、勇気なんてない。今まで、ずっと自分の道から逃げてきた。自分で情けないと思う。逃げてばかりで、問題に向き合うことができなかった。


強盗の話だってそうだ。面と向かって言えなかったから、あんな方法を取ってしまったんだ。他にもあったはずなのに。


結局、何も守れなかったじゃないか。本当の自分も。レジ袋も。螢灯も。


いつも螢灯と会っていた道。無意識に来てしまったのだ。あの日見ていた世界が嘘かのように、そこは明るく照らされていた。


突然、ふわっと甘い香りがした。


「…あっ…」


小さな声が漏れた。ふりかえると、あの日と同じように、そこには螢灯がいた。


嗚呼、僕はこれからどうしようか。そう思いながら、少しだけ、螢灯から目をそらした。












「治さん!」


思いもよらず、彼女から駆け寄ってきた。

其の時、僕の頭には思いもよらぬ事が浮かんだ。


____君と…螢灯と幸せになりたい



今なら言える筈そう思ってしまった。

僕が其の様な事を言って許されるのだろうか?

否許される訳が_「治さんどうしました?」



「何でもないよ。大丈夫。」

「そうですか?良かったです」


微笑む彼女の顔が僕の胸を締め付ける。


「あっ、あのさ、螢灯…」

「はい?」


いつの間に僕は恋に落ちていたんだ。





「君と…否、螢灯と幸せになりたい…、」





「治さん?」


「誓うよ、僕が螢灯を幸せにする」


「わたしも好きです」


「寶、僕と____付き合ってください」



「勿論、喜んで」



いつの間にか僕等は恋に落ちていたんだ



此れは紛れもなくレジ袋のお陰だ。



だから、僕はより一層思う。


此の世界から、螢灯とレジ袋を守らなければならないと。

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