世界を守る為ならば。
「螢、灯…さん…」
なぜ彼女がここに。冷や汗が止まらない。自分が持っているのは玩具の銃のはずなのに、やけに重く感じる。
「治さん、やめてください!」
彼女は僕に抱きついてきた。でも、もう戻れない。
「離せっ!」
彼女をふりはらって、客に見えないように玩具の銃を店員の横腹につきつける。
「早くしろ。」
「お、お金なんて渡せませんっ!」
「金なんかじゃねぇ!レジ袋、この店にあるレジ袋、全部持ってこい!」
「そんなことできるわけないじゃないですか!」
「いいから!じゃないと撃つぞ!」
「私たちは、レジ袋削減のために…」
これ以上話しても意味がない。人質が必用だ。
首に手をまわし、また同じように横腹に銃をつきつける。
「こいつが殺されてもいいのかよ!」
人質は…螢灯。彼女だった。
「治さん!やめてください、こんなこと!」
彼女は泣き叫ぶ。
「黙れ。」
僕の低い声だけが店内に響いた。
ふと彼女を見た。彼女の目には、もう光はなかった。
彼女を守るため。僕らのキセキを守るため。仕方がないことなのだ、と自分に言い聞かせる。
「…っレジ袋、早くしろ!」
「うっ…わかりましたよ!」
長いやり取りがあり、ようやく、店員が大量のレジ袋を抱えてやってきた。
「他にはもうないな!?」
「は、はい…」
僕は黙ってそれを抱え、彼女と共に店の出口まで行った。もちろん、彼女に玩具の銃をつきつけながら。
ゆっくり深呼吸をし、レジ袋をしっかりと持つ。
もう、離さない。
本当に小さな声で、彼女に言った。
「…ごめんね。」
「えっ…」
僕は全力で家まで走った。
「治さん!」
螢灯の僕を呼ぶ声がかすかに聞こえた。
嗚呼、神様。僕らの奇跡をどうか消さないで。




