step1 天国への門
眼を覚ますと僕は光に満ちあふれた場所にいた
足下を見ると雲のようなふわふわとした地面があった。此処は一体何処だ?
僕は視線を前に戻し、とりあえずまっすぐ進むことにした。すると眼前に規格外の大きさの門が見えた
まるで巨人が出入りするような門。僕は少し後ずさる
ギギッ、嫌な音を立てながら門がゆっくりと開いた。思わず口を開けてしまった僕の前に現れたのは
「はいはーい、天国へようこそ!」
背に白い翼を携えた金髪の男だった
「、は?」
「天国へようこそ!七氏 稔くん」
なんでこいつ僕の名前知ってるんだ。気持ち悪い
「そもそも、大の大人が白い羽ってなんだよ!それに天国って・・・」
「これはしょうがないの、ほら僕天使だしね!」
どうやら目の前の男は天使らしい。ここが天国とやらなら天使がいても可笑しくはないのだがなんで男なんだ。どうせなら可愛い女の子に迎えられたかった。それに天使だからという理由は納得できない
むかついたので頭に付いている金の輪っかを引っ張るが力をいれてもそれは取れなかった
「痛い痛い、それも羽と一緒で僕の体の一部なんだよ!?」
「いや、あまりにも気持ち悪かったから・・・つい」
「ついで許されるなら地獄はいらないよ!!はぁ」
疲れたようにため息を吐かれたが、疲れているのはこちらも一緒だ。
「もういいや、ここは天国!!そんでお前は死んだからここにきたんだよ!」
急に悪くなった口調に驚きながらもガラの悪い天使に聞かないといけない。
僕が死んだ?おかしな話だ。僕はさっきまで自分の布団で寝ていたはずなのに・・・
何で此処にいるのかは分からないが勘違いなのではないか
「僕は死んでなんかいない。お前が誘拐したんじゃないのか?腹黒天使」
「誘拐なんてしてねーよ。するならもっと可愛い女の子にしてる。誰が腹黒天使か」
それはこっちだって一緒だ。言い返そうとしたらそういう雰囲気ではなかった
おちゃらけた雰囲気で話していたのが腹黒天使は急に真剣な表情になったのだ
「お前は死んだんだ。ついさっきな。今のお前は死に立てほやほやなわけだ
それに死んだ時のことを忘れてるってのもおかしな話じゃない」
そう言うやつの顔はとても真剣で嘘を言ってるようには思えない。
それにその言葉に妙に納得してしまっている自分がいる
「何で死んだか知ってるか?」
「てめーの死因は自分で探せ。それにこんな所で立ち話してる暇もない、さっさと門を潜れ」
どうやら死因を教える気はないらしい。急かされるように門へ歩く
なんだかこの門を潜るともう、元には戻れない気がした。僕がいたところには帰れないような・・・
そんな僕の様子を見て腹黒天使は安心するように言った
「そこまで不安に思うことはない。この先も門の外もそう変わらないしな」
あまり納得出来たわけではないが今はこいつの言うことを聞いていた方がいいんだろう
僕は止めていた足を動かしゆっくりと門へと向かう
そのとき、ギギッと不吉な音がした。まさかと思うと開いていていた門が閉じようとしていた
「っな、俺たちが入っていないのに扉が閉まろうとしている!?
おい、走れ!あれが閉まれば俺たちヤバイぞ」
「はあ?っておい!!」
焦った表情を見せ今まで閉じていた翼を広げる。何をするかと思えば僕の体を掴み空を飛んだ
体は持ち上がり肢体が不安定な空中に投げ出される
「うわっ、降ろせよ」
「黙ってジッとしてろ!!!」
体を捩ろうとすると怒鳴られた。よほどやばい状況らしくそれ以上口を開こうとしない
僕も舌を切ったらかなわないので慌てて口を閉じる
ぐんぐんとスピードを上げるが門は既に半分以上閉まっている。間に合うかどうかは五分五分だろう
僕はギュッと眼を瞑り風圧に耐える。風を切る音が耳に響いていた
「もう、大丈夫だぞ」
声を掛けられやっと安全装置無しの空中飛行が終わったことに気づいた
恐る恐る開いた目に飛び込んだのは長い通路
「改めて、天国にようこそ」
後ろから差し込む光を受け輝くアイツは
ここが何もなさそうな通路の入り口であったとしても、確かに天使だった
女の子出せなかった...