1人ぼっちのパートナー
フリーラムランド…
動く人形たちが人間と共存する国である。
フリーラムランド…
寒いカルダス地方に位置する自然豊かな国であり、色んな種族がそれぞれの地域で平和に暮らす国でもある。
この国では、一部の住人たちが人形をパートナーとして養っている。
「人形のパートナー?」
恐らく、こんな疑問を持つに違いない。
実は…
この国では自ら生命や意思を持ち、動いたり喋ったり食べたり排泄したりする生きた人形たち…人形生物が存在するのだ。
大小種類様々で、人形たちはそれぞれの家庭で大事にされていた。
エリザベスもその1体で、女性資産家マルセル・ハーレスの屋敷で暮らしていた。
等身大であり…
小さな顔…
カールのロングの金髪…
パッチリした目…
キリリと引き締まった口元…
スラリとした体格…
その美しい姿で数多くの愛好者たちを魅了していた。
1人暮らしのマルセルにとってはエリザベスは唯一の家族であり、心より愛するパートナーでもある。
エリザベスにとっては人形冥利に尽きる事だろう。
夢のような贅沢三昧な生活が出来るのだ。
自分専用の広い部屋で、食べて遊んで暮らせる。
こんなサイコーなお嬢様暮らしはないだろう。
しかし、これだけ裕福なエリザベスも心の隙間を満たされないでいた。、
理由は明白だ。
エリザベスは人形としては、いつも1人ぼっち。
人形仲間がいなくて寂しい思いをしているのだ。
夕食の後片付けを済ませたマルセルは、エリザベスの部屋でゆっくりと語り合った。
愛する人形パートナーの心の隙間を知るマルセルは、こんな提案をした。
「人形同士でのお見合いなんて、どう? アナタがその気なら、ステキな彼氏を探してあげてもイイから」
マルセルの提案は、エリザベスにとって嬉しい事だった。
が…
予想外の返事をマルセルは耳にした。
「男ナンテ、イラナイワ。オ見合ナンテ、結構」
「彼氏、欲しくないの?」
「欲シクハ、ナイワ」
珍しい。
エリザベスは人間で言えば、二十歳前後の若い女性に当たる。
人間と同じように彼氏の1人ぐらいは欲しがるものだ。
現にだ。
知り合いの所で暮らすローズマリ人形なんか、ボーイフレンドが3体人もいるのだ。
だからエリザベスだって…
まあ、あれこれ推理したって分かりっこない。
理由を尋ねてみる。
「どうして、いらないの?」
「男ナンテ、ウットウシイ」
「うっとうしい?」
「ソレヨリモ、私ハ…」
エリザベスは手に持っていた1冊の雑誌を開いて、或るページをマルセルに見せた。
マルセルが目にしたのはページに載っている商品写真である。
「子供人形?」
写真には、オシャレに
着飾った小さくて可愛い女の子人形が写っていた。
エリザベスはウットリとした眼差しで、自らの希望を口にする。
「私ニ良ク似タ可愛イ女ノ子、沢山欲シイノ」
ジッと写真を見入るマルセル。
「ふーん、女の子人形ね」
人形生物は、体を作って命を吹き込む事で新しい人形が出来上がる。
結婚して性的関係を持たなくても、子供人形は欲しくなったらいつでも出来るのだ。