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笹本カウンセリング事務所  作者: 和風露カルタ
笹本カウンセリング事務所 第一部
1/18

プロローグというか、現状報告

           @



 初めに記すべきであろう事なのでまずここに明記する。これは、超能力を持った僕が全能の神、ゼウスと戦う事になるまでの経路を記した物語である。という書き出しで始まる小論文を提出したら、担任に「後で職員室に来なさい」と言われたので、放課後職員室に行ったところ心配そうな顔をした担任が「ついて来て」と言うので、ノコノコ着いて行ったらカウンセリングルームにたどり着いた。

 本気で探偵になろうと思い立って、為になりそうな本を十冊ほど買占め読破したら、ある日家に精神科医の先生とやっぱりカウンセリングの先生が居た。そんな事があったから現実ではあまり這入る事のできない屋上に、鍵を盗んでこっそり忍び込んで寝転んでいると「早まるんじゃない」のオンパレードが聞こえてきたので立ち上がったところ、屋上の縁から足を滑らせて落ちた。目が覚めると、そこは、カウンセリングルームであった。



          @@



 とまぁ、カウンセリングの先生との関わりを多く持った人生を送ると大体こうなるのではないだろうか。今現在花の学生生活を終えて五年が過ぎた今、僕は、カウンセリングの先生になっていた。カウンセラーになっていた。

カウンセリング。それは、個人のもつ悩みや問題を解決するため、助言を与える事。精神医学・臨床心理学等の立場から行うときは、心理カウンセリングと呼ぶ事がある。平たく言えば、身上相談である。

 カウンセラーと言ってもその幅は中々広く、反復横飛びするには無理があるほどだ。病院カウンセラー、学校カウンセラーなどなど。しかし、先ほど述べた二つは臨床心理士の資格や普通教員免許が必要になるので避けた。出来るだけ早く親の期待を裏切りたかった僕は、アパートの一室を借り、自宅にした。そしてもう一室借り、大家さんに頼み、事務所にした。そこが僕のカウンセリングルームであった。

 しかし、この事務所には少し困った噂が金魚の糞が如く纏わり付くので、クライアント、つまり来談者の層が極々わずかな物となった。

 殺人者。

 人殺し。

 彼らもしくは彼女らは、阻害されて迫害されて世間から除け者とされてきた。しかしそれは間違いだ。殺人者も人間であり、人殺しにも感情がある。そして、心を病んだ殺人者もまた、人間と同じように救済されるべきである。少なくとも僕はそう思う。

 誰もが嫌がる泥仕事や汚れ仕事は、誰かがやらなければならないものなのだ。そしてその『誰か』が、何故そうなったのかは知らないが、この僕なのだった。

 僕はそれを嫌がってはいないし、辞めたいとも思わない。そもそも、彼らには彼らなりの事情があるのだから、それを聞いてあげることが僕ら『カウンセラー』の本来の仕事であると思う。

 まぁ、そんなわけでここ、『笹本カウンセリング事務所』を訪れる殺人者は後を絶えない。

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