それを恋だと言うのなら
私はあなたに思いを寄せていた。
あなたはあの子に恋をしていた。あなたは私の思いを踏み台にしてあなた自身のそれを叶えた。
誰の目から見ても確かな、約束されつつも目が離せない関係とその先。
それを本当の恋だと言うのなら、あなたに踏みつけにされた私の気持ちは一体なんだと言うのだろう。
誰にも邪魔されず叶うべきものが恋だと言うのなら、あなたがその手ですり潰した私の気持ちは一体なんだと言うのだろう。
私のそれと、あなたのそれ。一体何が違ったのかと、あなたはどんなふうに私に教えてくれるのだろうか。
この気持ちは踏まれてもいいもので、その気持ちは何よりも優先されて見守られるべきものであることの違いを。
どうか私に教えてほしい。
二人が運命としか言いようのない出会いをして惹かれ合って結ばれたと人々は囁き合うのに、私があなたに出会えたことは誰も何も触れもしないことの違いを。
どうか私に、教えてほしい。
…いっそのこと現実を突きつけて、私を嘲笑うか見向きもしないことを見せつけてくれたら良かったのに。
あの子と私は仲が良いから、あなたは私にそれをしない。むしろ、優しい。当たり前だ。
私は二人のキューピッドなのだから。
私はあなたのことを愛していた。
きっと、あの頃が一番生きていると思えていたと思う。だけど、あの頃に戻りたいかと聞かれたら、きっと私は首を振るだろう。
あの頃をただ懐かしんで愛しむには、閉塞感と苦い味が強すぎる。ただ甘い時間であったと片付けるには、あまりにも慌ただしかった。
怒って、悲しんで、愛して、苦しくて。時折安心して、それでも苦しくなって、縋って、突き放されて。
苦く薄暗い記憶の合間に思い出したようにざらりと甘い記憶が入り混じる。
辛いことが起きるたび、拠り所を求めてもたれかかって、どうせなら全てどうとでもなってしまえと自暴自棄になって。
翌朝、どこか空虚な息切れと倦怠感に包まれて目を覚ました時の気持ちの正しい処理の仕方を知らないまま、今を拗らせて生きている。
私は誰かに抱きしめられて眠っていた。
その温もりを今は覚えてはいないけれど、私が愛したあなたではなかった。
生ぬるい心地よさと薄ら寒い気持ち悪さが体の中で混ざり合って、ただひたすらに目をつぶって考えていた。
あなたは今あの子と何をしているのか、を。
けれどそれを知る資格は私にはなかったし、あなたたちから避けるように逃げ出したのは私の方だった。
まったりと甘くて、それでいて心踊る関係に、心底吐き気がしていたから。
私は誰かに愛されながら生きていた。
その愛は心を落ち着ける灯りでもあったし、私の首を絞める麻薬でもあった。浸っている間はいい。ほんの少しだけ全てを忘れて、愛が全てであると錯覚できるから。
けれど、その愛と愛の隙間、ほんの少しの途切れ目が、ふとした瞬間私に噛み付く。そうなるともう、寂しくて寂しくて、私は一層誰かから与えられる愛を求めて縋り付く。
私が心の底から求めた愛ではなかったけれど、愛は愛に違いないから。
けれどそれが引いた後、私はどうしようもないほどの寂しさに襲われる。
どれもこれも全部、あなたのせいだとひと息に言えて仕舞えばよかったのに。




