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ごめんね異世界遊ばせて?  作者: 雲川ぬーぬー


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5/5

今ちょうど『聖剣エクスカリバー(時価数十億)』を買おうとしてるから

俺の叫び声は、真っ白な空間に虚しく吸い込まれた。

地面も壁もない、どこまでも続く白い世界。

その中心、黄金のソファに寝そべってポテチを食べている綺麗な女性がいた。


「あー、ソウタくん? 勇者と聖女の息子よね。いらっしゃーい」


神々しさの欠片も見えない美女が、気だるげに俺へ手を振った。


「……あんたが女神か」


「そうそう、適当に世界を管理してる女神様よ。あの二人から話は聞いてるわ。転移の扉は私の方で開いておくから安心して。あ、お土産袋の中にポテチ入ってない? 『黒竜ブラックドラゴンの味噌バター焼き味』、聖女にお願いしたんだけど」


俺は促されるままソファに座り、荷物を置いた。

両親から持たされた、三姉妹用のお土産袋を漁る。


「そんなものあるわけ……いや、なんであるんだ?」


袋の底から出てきた『黒竜の味噌バター焼き味』を女神に手渡した。


「わーい! あの子の料理、マズいけど癖になるのよね~。一口食べたら止められないのよ」


女神は早速袋を開け、バリバリと食い始めた。


「うん、マズい! もう一個! 超高級食材の黒竜を味噌とバターで殺して、その上フライパンで焦がして台無しにしてる。最高に贅沢な食べ方よね。そう思わない?  ソウタくんはどう?」


この女神、味覚も性格もかなり捻くれている。


「ポテチの話はどうでもいい。それより親父が言ってた『ブラックカード』ってのはどういうことだ。剣と魔法の世界にクレジットカードなんて普通ないだろ」


「あーもう、ハイハイわかったわかった。せっかちな上に生意気とか、流石あの勇者の息子だわ~」


女神が面倒くさそうに指をパチンと鳴らす。

すると空中に、ホログラムのような『利用明細』がズラリと浮かび上がった。


「説明は最小限にするわね。管理が面倒だから、冒険者ギルドに丸投げしてるのよ。持ち主の魔力を担保に決済ができる優れもの。勇者と聖女が言い出して、私が許可を出したの。今はほとんどのお店で使えるから、転移したらまずギルドに行きなさい。ちなみに、そのブラックカードは魔王を倒した報酬に『一生遊んで暮らせる権利』として渡したんだけど……」


「……んだけど?」


「三姉妹が使いすぎて、お金を使い切りそうなの。勇者の娘たちが破産なんて悲惨すぎるし、私の体裁も悪いのよ。もう他の神から怒られてるし」


なるほど、神も人と大して変わらないらしい。

女神の目から光が消え、乾いた笑い声が漏れる。


「ちなみに、どんな買い物を?」


「国一つ買えるレベルの宝石、特級の魔道具、魔導戦車(限定モデル)……。このままだと国宝や古代兵器にまで手を出しそうで怖いのよ。魔王軍再興の噂もあるし、神の私が直接介入するわけにもいかないし。誰か止めてくれないかなー、って思ってたところ」


明細に並ぶ数字を見て、俺の意識が遠のきかけた。

『〇億ゼニー』という単位が、まるでスーパーのレシートのように並んでいる。


「ハッハッハッハ!……嘘ですよね?」


「アハハ! マジも大マジ。女神を放り出して自分探しの旅に出たいレベルよ。他の神に押し付けようとしたら、みんな裸足で逃げ出したんだから」


この女神も現実逃避していたわけだ。

会ったこともないウチの姉妹が、本当に申し訳ない。


「……女神様、一つ聞きたいんですけど」


申し訳なさすぎて、自然と敬語になった。


「なーに?」


「そのカード、利用停止にできませんか?」


「本人か両親ならできるわ。でも二人はもうこっちに来られない。……あ、君がカードを没収して私に返納すれば、凍結できるわよ」


「わかりました。あと、俺が日本(あっち)異世界(こっち)を行き来できるようにしたいんですが」


「かなりグレーだけどいいわよ。世界を壊すわけにはいかないからね。私が手を回しておくわ」


さすが女神様、話がわかる。

ウチの両親も見習ってほしい。


「ちなみに、ウチの両親から手紙とか書類とか来てませんか?」


「いや、知らないけど?」


あの二人、今度会った時に覚えてろよ。


「色々と本当にありがとうございます。お互い大変ですね」


「ええ、本当に」


俺たちは固く握手した。初めて理解者を得た気分だ。

俺の拳は、怒りと使命感で震えている。


「あら、やる気満々ね。いいわよ、転送完了まであと五秒。……あ、次女のミストちゃん、今ちょうど『聖剣エクスカリバー(時価数十億)』を買おうとしてるから急いだほうが」


「……早く転移をッ!!!」


視界が激しく明転した。

次に目を開けた時、そこは豪華絢爛な大広間だった。


「……あの、どちら様ですか?」


青い髪をした女の子が、真っ黒なカードを手に持っていた。


「お前だな? 我が家の不良債権は」


「え?」


両親に似た顔立ちの間抜け面へ、俺の拳が唸りを上げる。


「鉄拳制裁ッ!」


「おふぅっ……!」

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