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10 余談、狡い証拠集め

蛇足ですが、本編に入りきらなかったアーサーとスザンナのギスギス学園物語です。

スザンナはアーサーとフェデリカに対して何このクソ王子とピンク頭と思っているし、アーサーはどうにかして証拠を集めてやるぞと気合を入れています。

「スザンナ、明日は予定を変更したいと思う」

「はい、どのように」


 スザンナがアーサーに向ける瞳に軽蔑が混じったのはいつからだろうか。そんな事を考えながら、アーサーはスザンナへ話し掛けた。


「街に行く予定だったが、孤児院への視察にしたい。外国から不法入国した者の孤児が流れてきていると聞くから、実態を確認する」

「そうですか。かしこまりました」


 これで話は終わり、とでも言うようにアーサーから離れて行こうとするスザンナ。アーサーは今だと思い、話を進める。


「不法入国についてマーレー公爵家の見解を聞きたい」


 既に話を聞いていない様子のスザンナは振り返ってアーサーの方を見た。


「はい?何でしょうか」

「いいや、興味が無いならかまわない」

「はい。それでは失礼いたします」


 同級生の側近候補達に、アーサーは確認した。


「見たか?スザンナ嬢は政治の話を振ると逃げていった」


 もちろん確認しましたと、側近候補達は言う。


「この様子を記録に残しておくように」



「留学中のウッズ子爵家の嫡男から報告書が届いた。王宮に来て目を通しておくように」


 王子妃教育を一通り終えたスザンナは、王宮に来ることはない。婚約者との交流という名目でアーサーが招待しない限り、彼女が進んで王宮に来る事もなくなった。

 ウッズ子爵家の長女が取り巻きに居るにも関わらず、むしろその取り巻きから情報を得られるからか、スザンナが報告書を見る為に王宮に来ることは無かった。



 ある日、学園でいつもの様にフェデリカがアーサーの隣に座り、こんな話を始めた。


「お父様の商会のお、化粧品が売れなくなっちゃってえ。外国から仕入れてちょっと高いからなかあ。すっごく綺麗になれるのにい」


 アーサーも知っている、コリン男爵家の商会が仕入れる化粧品。使っている素材が良くないと評判の物だった。

 これは良い話だと思い、アーサーはスザンナを呼んだ。取り巻きが後ろからついてきているが、皆同じ様に汚い物を見るような目をしており、アーサーは笑いを堪えた。


「スザンナ。フェデリカが言っている外国由来の化粧品について、公爵令嬢としてどう思うかな」

「私は使いません」

「どう考えていると、聞いている」

「あたしはあ、綺麗になれるのが一番だから良いなあって思うよ」


 話を見事に遮ったフェデリカに不快そうな視線をスザンナは向けている。


「それを使って綺麗になりたいなら良いのでは」

「では、賛成派か」

「賛成も何も、彼女が使用することに対して止めませんというだけです」

「マーレー公爵家は輸入に慎重なのではと思うが、その意見は公爵家のものか、スザンナ個人のものなのか」

「私個人です。私が、彼女の使用については止めないというだけです」

「そうか。なら良い。聞きたかっただけだ。ただ、あなたの言葉は公爵家の意向も含むと思っても?」

「そうしたければ、ご自由にお考え下さい」


 スザンナはアーサーに背を向けて行った。

 アーサーは側近候補に耳打ちする。


「スザンナ嬢は、輸入の話も、こちらから公爵家の意向をたずねても答えることを拒否している」



 アーサーはスザンナの誕生日にドレスを贈る事にした。ドレスショップに出掛け、こう伝える。


「好きなデザインが良いと思って。気に入った物を選んで欲しい」


 一般的に、ドレスを贈る際にはデザインも依頼するものだが、アーサーはわざと一からスザンナに選ばせることにした。付いてきたスザンナの侍女達は、プレゼントのドレスを本人に選ばせるなんて、というような顔で心配そうにスザンナを見ている。

 ドレスのデザインをショップ店員と話している時、アーサーは一つだけ注文をつけた。


「この国の王子妃に相応しい物を。でないと、外交に支障が出る」


 そう言い残して、多めの料金を渡してショップを出た。


「まさか、ドレスショップに婚約者を置いて出てくるだなんて、とんだダメ王子ですね」


 馬車でコナーがそう言うと、アーサーは抑えていた笑いを吹き出した。


「我ながら、役者になれるのではと思う」

「他の側近候補方は?」

「ショップを出た所に居合わせたフェデリカとデートだろう。彼らにはショップに行くことしか伝えていないから、ここからは自由行動だ」

「そちらもダメですね。いつ捨てるのですか」

「卒業と同時にだ」


 他の側近候補に苛立つルディを見るのもあと僅か、とアーサーが言うと、コナーも口元を緩ませていた。


 アーサーが言った、王子妃に相応しい物をという指示。そのドレスを卒業後に王宮の夜会で着てもらう為の指示だった。夜会には、他国の大使や滞在中の高位貴族も参加するため、王国の伝統的な柄や色が使われているドレスが望ましい。

 しかし、アーサーの指示をスザンナがどこまで本気に受け止めただろうか。


 結果はアーサーの期待通り。スザンナは夜会のためのドレスとは思わなかったようで、自身の好きな物を注文した。アーサーは出来上がったドレスを見て満足そうに笑った。

 スザンナの好きな、隣国シュペルグで出来た糸や模様を使った物だ。


「政治的指示に反した、と判断する。このような衣装を仮に夜会で着られると他国へ誤解を与えかねない」


 こうしてアーサーは地道な証拠集めを積み重ねた。

ありがとうございました。

一番可哀想なのはスザンナだと思うのですが(公爵令嬢として育てられて王族と婚約させられたけど婚約破棄させられて公爵家の血筋じゃないしとかごちゃごちゃ言われて隣国に飛ばされた…)、あのプレゼントのドレスどうしたと思いますか?捨てる?それともデザインは自分で選んだものだし隣国でちゃっかり着ちゃうのもあり?

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スザンナは捨てるような女ではないだろうなぁ…。そこまでの愛憎をアーサーに持ってないと思うし、それが外交的にアウトなだけでなく、家の立場としてヤバいことも正確には分かってないんだと思う。それくらいな娘な…
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